今年5月にコンビニの上にそびえる富士山という景観がSNSで外国人を中心に話題となりその前面道路を横断する人が増え、危険状態になったために道路に黒い幕を張ってしまったことが話題になりました。あれは一種の景観権の範疇だと思います。そして管理する富士河口湖町が黒い幕を張り見えなくさせたわけです。もしも明白な景観権があるなら当然法廷上の争いになる可能性はあります。ですが、景観と安全どちらが大事かといえば安全であります。富士山とコンビニという組み合わせがSNS上でたまたま話題になっただけの一時的なブームであることも黒い幕が正当化された理由でしょう。
但し、黒い幕については個人的にはえげつないとは思います。もう少し品の良いアイディアはなかったのか、とは思います。
さて、眺望権のほうですが、これは購入者の個人的価値をどこまで認めるかという話です。過去あった裁判では多少分かれます。一つは建物が目の前に建ち、隅田川の花火が見られなくなったという裁判。これは損害賠償が認められています。理由は新しい建物を建てたのが同じデベロッパーで原告が入居後、すぐに工事が始まったからです。ただし、私には被告がどこまで戦う気があったのか疑問です。理由は購入者は目の前に建物が建つ情報を知りうる状態にあったと想定できるからで、購入者の不備は当然あったからです。とすれば私の勝手な想像ですが、小うるさいクレームは裁判所の判断に任せて金銭解決した方がクリーンだと考えた節はあります。
つまり「裁判所も使いよう」というやり口です。なぜかといえば私も高層マンションを8棟も建てたのであらゆるクレーム経験はあります。その中でどうやっても解決できないクレームはあります。その多くは理不尽な要求なのです。理不尽とは法的にも過去の判例的にも常識的にもその範囲を超える要求です。そのため、私は5度ほど裁判をしていますが、完全に負けたことはありません。むしろ、そこで少額の賠償で収まるならそれで縁切りした方が良いのです。