ペレグリーニ氏は、これら伝統的なグラスが冷たさを保つ上で理にかなった形状をしていることについて、「偶然ではない」と考えています。

グラスの作り手たちが、意識的か無意識的かは分かりませんが、長い歴史の中で、熱伝導を最小限に抑え、より長く美味しいと感じるようなデザインへと進化させてきたというのです。

画像
ペレグリーニ氏が提案するカテゴリ別の最適なグラスの形状の例。(左)最適なワイングラス、(右)最適なビールジョッキ。どれも飲み口が広がっている / Credit:Cláudio C. Pellegrini(UFSJ),arXiv(2024)

ちなみにこの研究では、既存のデザインで最適なグラスがどれかという議論もしています。

現代では様々な形状のグラスが販売されているため、様々な店に出向いて、これら理想的なデザインに近いものを探すのも楽しいでしょう。

ペレグリーニ氏はこうした議論の中で、「ビールを冷たいまま飲む」上でような下図のようなグラスを使用すれば、ほとんどの人は、ビールを最後まで冷たい状態で飲むことができるようだと述べています。

画像
ブラジルで人気の小さいビールグラス。ぬるくなる前に飲み干せる / Credit:Cláudio C. Pellegrini(UFSJ),arXiv(2024)

ペレグリーニ氏は、最初に製造した企業の名前からこのタイプのグラスを「ナディール・フィゲイレド・グラス(Nadir Figueiredo glass)」と呼んでいます。

このグラスは、ブラジルでビールを飲むのに最も広く使用されており、これまでに60億個以上製造されてきました。

しかしこれは、形状によって冷たさを保たさせているのではありません。

容量が小さく(190ml)、一口、二口で飲み干せるため、ぬるくなる前にビールが消費されるだけなのです。

そのためペレグリーニ氏は結果に反して「そのような醜い飲み方では、ビールを飲む意味が全くない」と主張しています。