動物肉や動物由来の原料を一切口にしないヴィーガンの人々でも食べられる、100%植物性原料のみを使用した「ヴィーガン麻婆豆腐」を提供するお店が話題になっています。
訪日旅行者向けの情報が集まる口コミサイト「トリップアドバイザー」では平均評価が最高評価の星5つという評判ぶり。気になるその味を確かめに行ってきました。
お店の名前は「罪無き麻婆豆腐」。今年夏まで、東京・亀戸の飲食店を間借りしてのイベント営業が行われていましたが、好評を受けて営業を拡大。10月に六本木の「六本木ロイヤルビル」(東京都港区六本木3-9-3)地下1階に移転し、常設営業を開始しました。
地下鉄日比谷線・大江戸線の六本木駅から、赤坂方面に歩くこと約5分。バーやラウンジが立ち並ぶ路地の奥に、店舗を構える「六本木ロイヤルビル」があります。
営業中の目印として表に掲げられている、「罪無き麻婆豆腐 100% plants base vegan mapo tofu」という看板を目印にビルの階段を下り、奥まで進んだ突き当りに「罪無き麻婆豆腐」の店舗があります。ちょっと秘密基地っぽい立地が興味をそそります。
■ 「植物性」のイメージを覆すパンチの効いた味 秘密は“きのこ出汁”
もともとはスナックだったところに入居したという店内は、L字型のカウンター席が6つほどのこぢんまりとした空間。暖色の照明が灯り、アットホームな雰囲気です。
メニュー表はカクカクとした個性的な字体で、一つひとつがかっこいいロゴマークのよう。まずは看板メニューの「“ピリ辛”麻婆豆腐定食」(税込1090円)からチャレンジしてみます。
黒い丼に盛り付けられた「“ピリ辛”麻婆豆腐」は、ターメリックを思わせる黄色に麻辣の赤さが重なった、美味しそうな色合い。平皿にのった、かわいい1口サイズの餃子が5つと、白ご飯が付いてきます。何も知らずに見たら、中華料理店で見かける濃厚な麻婆豆腐そのもの。少なくとも、一切動物性の原料が使われていないようには見えません。
添えられた小鉢には味変用のタレとして、豆板醤と酢こしょう、ごま油。コンパクトなお膳の中に品数たくさんで、なんとも贅沢な見栄えです。
はたしてお味はいかに。まずはメインの「“ピリ辛”麻婆豆腐」からいただくと…… 食べてビックリ、いつも味わうあの麻婆豆腐の味です!
一口目からガツンとパンチの効いた味で、食感もまるでお肉のよう。本当にお肉ゼロ、動物性原料ゼロでこの味を……!? 一体どうやって!? 食べる手は止まらず、さらに謎を解こうと頭がフル回転を始めます。
舌鼓を打ちつつ、使われている材料を探ってみることに。麻婆豆腐の中でレンゲをすくうと、しめじなどのきのこ類が顔を出しました。
しめじは旨味成分のグルタミン酸を多く含むことで知られており、強い出汁が出ることでも有名。お肉のような食感は、高野豆腐などの食材を組み合わせて作り出しているようです。
植物性の原料だけでも、組み合わせを工夫することでここまでの旨味が出るとは。そのアイデアと技術に感服です。
続けて餃子もいただきます。中身には出汁を含んでジューシーな食感に仕立てた豆腐がぎっしり詰まっていて、ひき肉に引けを取らない美味しさ。皮にもしっかり味がついていて、白ごはんが止まりません!
どことなく味控えめな印象のあったヴィーガンメニューですが、ヴィーガン以外の人も十分に満足できるコクと旨味がたっぷり。ボリュームもしっかりしていて、前提を抜きにしても通って食べたくなる美味しさでした。
■ 乳製品を使わない植物性チーズで豊かなまろやかさ「“チーズカレー”麻婆豆腐定食」
お腹がプクプク膨れる以上に、さらなる探究心がムクムク。続いてもう一つ、「“チーズカレー”麻婆豆腐定食」(税込1400円)にもチャレンジしてみます。本来は乳製品であるチーズですが、こちらも植物性原料100%とのこと。はたしてどんな味なのでしょうか。
出てきたお盆には、白い丼に淡い黄色のカレー風麻婆豆腐がなみなみ。その上には真っ白いフレーク状の植物性チーズがたっぷりとのせられ、丼の半分を覆っています。
いざ食べ進めると、すごい……しっかりチーズのまろやかさとコクを感じます。カレーのルーはクリーミーでほんのり甘く、それでいてしっかりした旨味。チーズとの絶妙なバランスを保ちつつ、まあるく優しい味わいに包みこまれました。
店主の方いわく、チーズには豆乳などを使用し、植物性の原料のみで豊かな味を実現しているとのこと。食べれば食べるほど「ヴィーガン麻婆豆腐」の魅力のとりこになっていきます。こんなに奥深い世界だったとは……。おみそれしました。
■ 立ち上げのきっかけは“反抗期”「ヴィーガンの人もそうでない人も美味しいメニューを」
「罪無き麻婆豆腐」を切り盛りするのは、ヴィーガンの家庭に育ったという店主の宮崎翔太さんと、早川 諒さん。宮崎さんにとってヴィーガンの食生活は食べ盛りの青春時代には辛かったようで、反抗期には「親の前でソーセージやハムをこれみよがしに食べて見せた」こともあったといいます。
「ヴィーガンの人も、そうでない人も一緒に美味しく食べられる食事を作りたいという思いが芽生えて、お店を作ろうと思い立ちました。メニューをいろいろと考える中で、みんなに愛される麻婆豆腐に至りました」(宮崎さん)
肉や動物性原料を使った既存メニューの「代替品」というイメージがあったヴィーガンメニューですが、いただいたメニューはどれもご飯としてとても美味しいものばかり。なんとなく敬遠していた人も、食の裾野が広がりそうだと感じました。
「罪無き麻婆豆腐」の営業時間は、“豆腐(トーフ)”にちなんで10時2分から、16時ラストオーダー、16時30分まで。開店日については、お店のXやInstagramのアカウントをチェックしてください。
<取材協力>
罪無き麻婆豆腐(公式X:@VeganViViVi/Instagram:@vegan_vivivi)
(天谷窓大)
提供元・おたくま経済新聞
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