参加者たちは、こうした笑顔を操作するフィルターが仕込まれていることに、実験中全く気付きませんでした。
しかし、実験後のアンケートによって、この気づかないレベルの笑顔の増強でも、お互いの魅力を増大させていると分かったのです。
特に効果が高かったのは、両者の笑顔を同じタイミングで増強した時です。
2人を同時に笑顔にした時、参加者たちは、他の条件の時よりも相手に惹かれやすくなり、互いに対する魅力が大きくなったのです。
サラ氏も、「ロマンチックな魅力は、参加者が同時に、お互いの笑顔を認識しているかどうかに影響されました」と述べています。
よくお互いが笑顔になった瞬間を「心が通じ合った時」「お互いに好きになった時」と表現することがあります。
この実験では、AIがそのような場面を意図的に作り出すことで、参加者たちにほのかな恋愛感情を芽生えさせることに成功したのです。
ちなみに、研究チームがデート相手の笑顔をより増やすと、参加者は「相手は自分に一層惹かれている」と信じるようになりました。
これは、AIによる笑顔フィルターの効果が非常に強力であることを示しています。
今回の研究結果が示すのは、「AIが人間の感情を操作し、人間関係を変えてしまうかもしれない」という危惧です。
こうした技術は、当然オンラインデートだけでなく、オンライン面接などオンライン上で交わされるあらゆる会話に介入して印象を操作できる可能性があります。
そのため研究チームも、「これらのテクノロジーの使用と規制に関する明確な倫理ガイドラインが、将来的に必要になるかもしれない」と述べています。
写真や動画で見た目を良くする顔加工フィルターは、現在広く普及していますが、これは顔全体の作りさえ変えてしまうものが多く会った瞬間にすぐにバレてしまいます。