自分と相手の間に「AI」が存在し、介入しているのです。
ただし、私たちの多くは既にAIに加工された顔を見慣れており、大抵の場合、フィルターが掛かった顔を見抜きます。
目が大きくあごが細い「同じような顔」や、フィルター特有の微妙な違和感にうんざりする人が少なくありません。
現状の顔加工技術は驚くほど進化しているものの、原型から顔をいじりすぎていて、直接会えばすぐ加工していたことがバレるようなものがほとんどです。
そのため多くの人は、ビデオチャットに介入するAIの存在を軽視しています。
しかしその認識は危険です。
最近、グラスゴー大学の研究チームが開発したAI顔フィルターは、「ユーザーの笑顔を僅かに増減する」という控えめなものですが、それでも、このフィルターを使用する人々の心に大きな変化を及ぼすことができたのです。
笑顔を同時に増強するAIがユーザー間の恋愛感情を操作する
今回の実験には、31人(独身の異性愛者)が参加しました。
各参加者は、オンライン上で二人一組になり、計4回のオンラインデート(ビデオチャットによる会話)を行いました。
それぞれのデートの後、参加者たちは、相手に惹かれたか、相手にもう一度会いたいと思ったか、会話の質はどうだったか、などを評価します。
ただし研究チームは、ビデオチャットの間、参加者には知らせずに、AIにより笑顔を僅かに増減するフィルターを作動させました。
このフィルターは、ビデオチャットしている参加者の笑顔のレベルを僅かに強めたり、逆に弱めたりできます。
この操作によって、AIは両者が笑顔を浮かべるタイミングさえ意図的にズラしたり、逆に同時に笑顔を作っているように演出することができるのです。