東京で会議の後、会議参加者と一杯ひっかけていきましょうと立ち寄った渋谷駅近くの居酒屋。お会計はおひとり様2000円ぽっきり。待てよ、学生時代、渋谷の安居酒屋で学生コンパしても一人3000円はかなり厳しい予算だったよなと思うのとあれから40数年たっても物価が一つも上がっていない、こんな幻のような国があってよいのかと思うわけです。
かつての消費は物欲でした。デザイナーズブランドから趣味のモノまで経済学的な所有欲という意識が強かったのです。物欲という欲望はコップいっぱいまで満たされるまでの事象で万国共通です。日本は30年ぐらい前にコップが小さくなって物欲がフルになり、大きな転換期を迎えます。そして経験、体験、サービスといった消費にシフトしました。食のブームもそうです。万人が食のレポーターになり、おいしいものをひたすら探し求めます。「私は限りある人生、一食たりともまずいものは食べません」宣言をした方を何人か知っていますが、そんなの長く続くわけないのです。フランス料理をずっと食べ続けてたらあなたがフォアグラになってしまいます。
小学校の時、おいしいものを食べ続けたいと思ったことがあります。その時に「天皇陛下もサンマをお食べになるのですよ」と聞いて衝撃でした。そうか、毎日豪勢なものを食べるのではないのだと。事実、私も秘書の時、数週間の会長の随行出張で業務上会食が続きグルメ三昧した帰り、JALのファーストクラスで黒服の「お食事はいかがいたしましょう」という質問に会長と私が隣同士でカレーライスを食したのは「普通のものが食べたい」一心でした。
私の大胆な予想を申し上げると日本の一人当たりの消費が伸びることはないと思います。なぜなら国を挙げて消費が急激に増えるほど欲望が伸びる要因がないからです。むしろ人口が減り、高齢化が進むのですから総消費つまり総需要は減るのが当然の流れになります。総需要が満たされないなら供給側は淘汰されるか、さもなければ外国人の需要で補填してもらうしかないと思います。