公職の候補者による権利制限の回避は知る権利と著作物の公共性等から権利濫用?
著作権濫用の抗弁 構成利用を中心に 五味由典
判決では、国の著作物も個人の著作物同様に扱い、権利行使自体に差異を設けない、との前提に立ちながら、著作物一般について「国民の知る権利」、「著作物の公共性」という観点から権利濫用の可能性を示唆するようにも読める。
前掲判例の判断について、このように評価する者も居ます。
また、この事案では著作物性に関して権利濫用が主張されており、今回のような著作物であることを認めた上での公正な利用方法である40条の権利制限の回避の主張に対する権利濫用の抗弁ではない、とは言えます。
さらに、判例の事案は著作権者による出版前に無断で復刻版の出版をしようとしたために差止請求が為された事件であり、既に公開されたYouTube動画のそのままの転載(だったとされる)石丸市長の事業者の事案とは少し状況が異なります。
著作物の公共性の観点から、判例は学術的価値のあるものであったのに対し、石丸市長の都知事選出馬記者会見を収めた動画はどうか?公職の候補者として出馬する予定で政策を訴えている内容というのは、物事の公共性の観点から著作権による保護をどこまで貫徹するべきなんでしょうか?1
著作物性を認めるとして、メディアやジャーナリストなどがUPした出馬会見動画について著作権を主張することと、公職の候補者本人がUPした出馬会見動画について著作権を主張することを同一に見てもよいのかどうか?
国民の知る権利との関係では、公職の候補者として出馬する予定で政策を訴えている内容というのはまさにその内容が伝わることの重要性は高いのではないか?
このように考えると、今回のケースでは権利濫用とはならなくとも、細かい事実が異なるだけで権利濫用の主張の途が開くことはあり得るのではないか?と思わざるを得ません。
国会審議中継動画はその放送の仕方に工夫があるが、そうではない場合にどうなのか?
本件はどうなのか?
解釈・認定に差が出て来得る事案と言えるような気がします。
1:石丸市長は都知事選に出馬表明をした時点ではまだ正式な「候補者」ではないが、ほぼ同視できる
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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