「もっと」と欲してしまう理由
ウィル・スミスが語るように成功すればするほど「もっと成功したい」「もっとお金がほしい」と欲が出てくる。
それだけじゃない。成功してお金も手に入れて人生安泰と思いきや、むしろそれらを失う恐怖・不安に苛まれることになる。これは成功した人たちの自伝などで赤裸々に語られた本音を知るとよくわかるはずだ。
ただお金や成功を追い求めても幸せになれないのだ。それでも私たちは「お金がもっとあったら……」とか「もっと成功したら……」と思わずにはいられない。そこには2つの理由があるのではないだろうか。
ひとつは、世の中に溢れているメッセージがそう謳っているから。もうひとつは、そう信じないと絶望してしまうからだ。
世の中に溢れているメッセージとはどういうことか。テレビでは成功者の何億円という豪邸や芸能人の驚きのコレクションが紹介され、YouTubeでは登録者数何百万人を誇るユーチューバーが桁外れの企画動画を配信し、インスタには綺麗な写真とともにインフルエンサーが自由を謳歌している。
それらを見るにつけ「ここまでいけば、悩みなんてないんだろうな」と思ってしまう。別にコレクション蒐集も動画配信も興味がなくてもだ。
成功やお金を手にしたら幸せになれると思いこんでしまうのは、こうした情報が日々あふれているからだ。
だが、目に見えていることが真実とは限らない。私達が目にする姿は輝いている一面だけが切り取られたものだ。自分の苦しい姿や情けない姿をわざわざ公開する人は少ない。どんなに成功してもお金持ちになっても、みんなそれぞれ悩みや葛藤を抱えているのだ。
こうした話は頭ではわかっても、なかなか腹落ちさせることは難しい。それは単純に、成功者としての苦悩や葛藤を想像するのが難しいからだろう。私自身も本当に理解できたのは多くの成功者から直接話を聞いたり、自伝を読みまくってからだ。
「成功しても幸せになれない」なんて信じたくない成功したら幸せになれると信じてしまうもうひとつの理由。それは単純に信じたくないから。
理想の自分になれれば、より自由に充実した人生を送れる。そんな希望をもって日々がんばっているのに成功しても幸せになれないなんて……。そんなの絶望でしかない。
理屈はわかるが、今目指している目標やゴールを達成すれば得られるものがあるのも事実。なぜそれで幸せになれないのか?君はそう思うかもしれない。たしかに得られるものはある。しかしそれにより得られる幸福は一時的なものにすぎない。なぜなら目標がシフトし続けるからだ。
私は2022年11月からYahoo! ニュースに記事が掲載されている。現在日本で最大級と言えるポータルサイトに専門家として自分の記事が載るなんて、本当にうれしかった。ただ慣れとは恐ろしいもので2つ3つと記事を書いていくと新鮮さや最初の喜びは減っていき、10記事にもなると当たり前になっていった。
「ぜいたくな奴だ」と思っただろうか。たしかに、はたから見たらそうだろう。だが私だって最初は単純に記事が載ることを目指していた。しかしそれをクリアすると次はたくさんの人に読まれることが目標になった。そうして目標がシフト・変化していったのだ。
そもそも記事が掲載されることを目標にしていたのだから、成功して幸せになったと言えるのではないか。そう。たしかに1本目の掲載時にはそうだったのだろう。だが、今は? 成功したりお金持ちになっても、必ずしも幸せになれない理由はここにある。目標がシフトし続けるのだ。
「もっとうまくなりたい……」「もっと早く走りたい……」と上を目指すのはとても良いことだと思う。そう思うことが成長や上達の糧になるのは間違いない。それでも学生時代の部活や勉強などであれば、大会やテストなど残酷なまでの明確な時間的な締め切りがある。
では、大人になったらどうか。就職活動で希望の会社への採用を目標にし、入社したあとは同期よりもさきがけて課長になることを目標にする。課長になったあとは部長を目指すようになる。次は役員と、目標がシフトし続ける。
収入面でも同じだ。当初は年収が1000万円になれば生活はラクになると思っていてもそのラインを達成すれば次は1500万、2000万と理想はシフトし続ける。そこには強制終了となる区切りはない。
これは終わりがないゲームで、目標の高さは関係ない。ウィル・スミスが世界一になっても満たされなかったのと同じで「求めているものを手にできたとしても、幸せになるとは限らない」のである。
では私達はどうしたらいいのか?実は、幸せへの鍵は私達の内側にある。私は予期せぬ形でこのことに気付かされることになった。