チベット仏教の教えには伝説上の仏教王国である「シャンバラ」の言い伝えがあるが、その王国に通じる「眠りの広間」に関する記録が残されている。この広間では高僧が延々と深い瞑想に耽っているという――。
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■「眠りの広間」にいるサマディ状態の高僧たち
ベルギーの探検家、コンスタント・デ・デケン(1852-1896)は合計で約10回のチベットへの大規模な探検を行い、最後の探検では3年間定住して現地の人々との交流を重ね、チベット仏教の僧侶とも知己の仲となった。
デケンの日記によると、彼は長老の導きで付近の山にある「眠れる洞窟」を探検したのだった。
積まれていた石をどけてあらわれた入口から洞窟の中へ入っていくと、さまざまな形で神を表す金、木、石でできた多数の仏像が並び、直径8~10メートルほどの広間からさらに奥へと続く通路があった。
通路を進むとその先に「眠りの広間」があり、数名の高僧たちが座禅を組んで座っていた。目を閉じてピクリとも動かない高僧たちの中にはミイラや仏像のように見える人物もいた。
同行の僧侶に彼らのことを尋ねると、彼らは自我意識が消滅した“サマディ”状態にある賢者であり、意識が身体から離れ、他の領域へと旅しているとの説明を受けた。僧侶は彼らはやがて目覚め、未来の世代に知恵を伝えるというのである。
僧侶の許可を得てデケンはサマディ状態の高僧の身体に触れてみたところ、身体はかなり温かく確かに生きていたという。
一説では人類が危機に瀕したときにこの「眠りの広間」いるサマディ状態の賢者と魔術師が目覚めて地球を破滅から救うことが示唆されているということだ。