注12)学習用の『アポロン独和辞典[第3版]』(2010年)では、Sozialstaatは「社会保障の整った福祉国家」と訳されている。
注13)高岡はドイツ語からの翻訳文献のみを利用して「社会国家」を論じたが、同じようにフランス語文献でも「社会国家」が使われてきたから、「社会国家」定義そのものについてもためらいが読み取れる。
注14)高岡の本文における論述では、フランスにおける「福祉国家」の伝統が全く活かされていない。
注15)そうすると、太平洋戦争当時の日本の「戦時社会」は「ファシズム」として理解されることが多いから、フランスでの使い方のように「ナチズム」と「社会国家」とは別物だというフランスでの使い方からすると、日本の「戦時社会」を「社会国家」と見なすことが難しくなるのではないか。たとえば、丸山はその主著(1964)の「日本ファシズムの思想と運動」(:29-87)と「ファシズムの諸問題」(:247-269)において、当時の日本を「ファシズム」と断定している。また『広辞苑』でも「イタリア・ドイツ・日本・スペイン・・・・・・」をファシズムに含めている。同じく『日本大百科全書』(小学館)でもファシズムの典型としてイタリア・ドイツ・日本の3か国があげられている。
注16)社会学では「社会化」は‘socialization’の訳なので、このような「社会政策」を含めることはない。
注17)高岡は周到に「衛生主義的社会国家」論を第1章で、「生産力主義的社会国家」を第2章第3章で、「民族-人口主義的社会国家」を第4章で、「健兵健民政策を軸とする社会国家」を第5章で詳述している。いずれも歴史的事実が満載されていて、この資料・史料の豊富さには社会学者はまったくかなわない。
注18)本文には文庫版用の「補章」として、秀逸な高田保馬研究「高田保馬と戦時人口政策」が付加されている。これについては他日を期したい。なお、金子編(2003)を参照のこと。