それでも足りない供給を満たす手段として合成燃料に期待が集まる。水素と工場などから回収する二酸化炭素(CO2)を反応させてジェット燃料を人工的につくる技術だ。50年には最大のSAF供給手段になるとみられている。
そこでも壁は原料となる水素の確保だ。発電や製鉄、自動車などの基幹産業も脱炭素の手段として水素をあてにする。もし国内で生産する銑鉄をすべて水素還元製鉄でつくるなら600万~700万トンの、都市ガスの9割を合成燃料に置き換えるなら1400万トンの水素が必要だ。それも温暖化ガスを出さずにつくるカーボンフリー水素でなければならない。
そんなことを不可能に決まっています。水素作るにもエネルギーがいります。
世界の脱炭素はイノベーションの途上にある水素で帳尻をあわせる絵を描く。福島県浪江町にある国内最大級の低炭素水素の製造設備は、太陽光パネルを東京ドーム4個分の面積で設置し、生産できる水素は年間約200トンだ。国内調達が非現実的となると、海外から持ってくるしかない。
太陽光発電は事実上昼間しか使えず、天候によっては昼間も無理です。発電コストも火力や原子力より相当高い。しかも現在メガソーラーが無軌道に作ることができ、世論の反対を受けています。これ以上メガソーラーは無理です。
輸出余力はどこにあるのか。太陽光、風力などの再生エネでつくるグリーン水素や、化石燃料から取り出すブルー水素のどちらであっても、広大な土地と再生エネ、化石燃料などがそろう条件を考えると結局、オーストラリアや中東・アフリカ、米国が候補になる。
現状最も安定しているのが天然ガスやシェールガスを原料とした合成燃料です。技術も確立されています。天然ガスを液化して日本まで運んで利用するよりも現地にプラントを作って燃料にした方が、液化のインフラやコストもなく安価です。
それから特に我が国の場合、経済安全保障という面からもエネルギー消費を減らすことが必要です。特に建物の冷暖房効率を上げることです。この点では欧州に大きく遅れています。断熱建物にすれば冷暖房に使うエネルギーが大幅に減ります。建て替えが無理でもサッシを替えるだけでもそうとうに効果があります。