新型コロナウイルスはスパイク蛋白質の「手」で細胞表面にあるACE2蛋白質をつかんでウイルス本体を細胞に取りつかせ、潜り込み、ウイルスRNAが細胞に侵入する。そして細胞のシステムを乗っ取り自らを大量に作らせ、細胞の機能を狂わせ、結果的に細胞を破壊することで、病原性と症状につながる。しかしスパイク蛋白質だけでは何も起こらず、レプリカーゼで大量にコピーされても感染発症することは無い。異物として免疫に処理されて終了である。

レプリコンワクチンは「シェディング」が危険だと喧伝される。シェディングとはウイルス感染者が咳、飛沫などでウイルスをばらまくことだ。

先般、鼻にスプレーするだけで済むインフルエンザワクチンが実用化されたが、生ワクチンつまり弱毒化した生きたウイルスを成分とするため、「シェディング」する可能性がある※18)。ウイルスそのものが成分だからである。近年キャッチアップ接種が行われている風疹ワクチンも、生ワクチンなので同様である。

しかしシェディングはワクチンでは問題にならない。ワクチンは予防薬であり、発症しないか発症してもごく軽症で迅速に回復し、免疫を得られるからだ。タダでワクチン成分に被爆し効果が得られるなら、新型コロナワクチンは一万数千円だから極めてお得だ。ウナギのかば焼きの匂いで飯を食べるようなものである。

レプリコンワクチンでシェディングが発生し、接種していない人にワクチンRNAが取り込まれたとしても「感染発症はありえない」。そのワクチン成分のRNAは前述の通り、感染病原性が無いスパイクタンパク質しか作れないからだ。

ちなみに現在接種されているインフルエンザワクチンは、培養したインフルエンザウイルスの一部のタンパク質を分離精製したもので不活化ワクチンと言われ、感染性も発症する可能性も無い。

筆者は2000年前後に難病の遺伝子治療の実現を目指し先端バイオ創薬ベンチャーに肉迫し役員としての責も果たし、本邦看護専門誌初の遺伝子治療解説連載を敢行した※19)。しかし遺伝子治療の歴史は遺伝子が「効かない」歴史であり、20余年後の今ですらまともに遺伝子治療は実現していない。生命を護る遺伝子的防衛システムゆえである。