研究者によると、白亜紀にいたムカシゼミは初期の祖先に比べて、筋肉量が平均19%増えており、飛行速度は39%も速くなったと推定されたとのことです。
では何がセミたちの超進化を促したかというと、これは間違いなく鳥類の出現が最大の要因だと考えられています。
セミが急速に進化を始めた約1億6000万年前のジュラ紀は、まさに鳥類たちが台頭を始めた時期とぴったり一致していました。
最初期の鳥類たちの餌がほとんど決まって昆虫だったことを考えると、鳥類による捕食圧がセミたちの進化を加速させた可能性が最も高いのです。
このような”進化の軍拡競争”とも呼べる現象は、自然界では何も珍しいことではありません。
ある種の生物が天敵を出し抜くために新しい能力を進化させると、それに対抗して天敵の方もその能力を上回る能力を進化させるのです。
特に有名なケースが「コウモリvsガ」の進化競争でしょう。
コウモリがエコロケーション(反響定位)によってガの居場所を検出する能力を備えれば、ガはそれに対抗して、コウモリの発する超音波を吸収できる翅を進化させ、自らをステルス化する能力を獲得し始めたのです。
両者の軍拡競争は現在進行形で続いています。
残念ながらムカシゼミ科は絶滅してしまいましたが、いつの時代も、ライバルの存在が生物をネクストステージに引き上げてくれるようです。
「コウモリとガ」の進化がまるで軍拡競争のようになっていた
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参考文献
The evolution of birds made giant cicadas better flyers
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2024/october/the-evolution-of-birds-made-giant-cicadas-better-flyers.html