これはセミを含む多くの昆虫たちにとって最悪の事態となりました。
今まではどんなに凶暴な相手でも空さえ飛んでいれば逃げられたのに、突如として、空も飛べる凶暴な捕食者たちが現れたからです。
そしてムカシゼミたちは古代の鳥類たちにどんどん捕食され、格好の餌食となっていきました。
しかしセミの方もやられっぱなしではいられません。
新たな脅威が現れれば、新たに進化を遂げるまでです。
研究チームは最新の調査で、その証拠を見つけることに成功しました。
セミは鳥類の出現によって超進化していた!
ムカシゼミ科には約100種類ほどの種類が知られ、生息期間も非常に長かったことから、これまでに数多くのセミ化石が見つかっています。
さらにそれらを年代順に並べることで、体格や翼の変化を追跡することができます。
そこでチームは今回、約90種類のムカシゼミの化石を分析し、時代ごとにどのような進化したかを調査。
その結果、約1億6000万年前のジュラ紀後期を境に急速な進化を遂げていたことが判明したのです。
進化のビフォーアフターを比べると、違いは一目瞭然でした。
初期のムカシゼミは体型が比較的細身で筋肉量が少なく、翅(はね)は短めで楕円形に近いものでした。
また4枚ある翅のうち、前羽に比べて2枚の後ろ翅もかなり大きく、速度のある飛行には不向きだったと考えられています。
ところが約1億年前の白亜紀にいたムカシゼミを見ると、体型がずんぐりと太くなり、筋肉量が増えていました。
2枚の前翅は以前に比べて細長くなり、後ろ翅は非常に小ぢんまりとした三角形になっていたのです(上図の左下を参照)。
これらの変化を踏まえると、ムカシゼミは筋肉量の増加によって翅をより素早く動かせるようになり、翅の形状変化によって揚力の向上と飛行の効率化を起こしたと見られます。