ゼノボットやアンソロボットの存在は、生命にはデフォルトの進化の終点とは異なる、全く新しい形状や機能の獲得が可能であることを示しています。
生物としての死や体の解体が起きても、新たな多細胞生命として存在できるという結果は、既存の生死の概念を揺るがす結果と言えるでしょう。
研究者たちはこのような状態を生でも死でもない第3の「何か新しいものへの変化」であると述べています。
これまでの研究によって、がん患者などから摘出された腫瘍細胞を何十年にもわたり培養したり、幹細胞から人工培養臓器「オルガノイド」を作ることに成功しています。
しかし、それらの細胞は、元々の生命が生きていた頃と機能を引き継ぐ形で存在しており、ゼノボットやアンソとボットのように、新たな機能を獲得しておらず、第3の状態とは言えないでしょう。
次のページでは、この概念を使った、論文著者による興味深い物語を紹介します。
生と死と第3の状態が循環する物語
論文の著者の1人であるマイケル・レビン氏は、生と死そして第3の状態が存在することについて、一般の人々の興味を惹くための、ある1つの物語を構築しました。
物語は宇宙探査に出かけた科学者が、生命の住む水の惑星を調査する場面から始まります。
科学者が調査を行うと、惑星には多細胞生物やアメーバ、脊椎動物のような生物が存在することが判明します。
しかしそれらの遺伝子を調べると、一部の単細胞生物は脊椎動物と同じゲノムを持っていることが判明します。
地球においてそのような単細胞は精子や卵子しか存在しませんが、この惑星では独立して生活している単細胞生物として存在していたのです。
科学者はその事実に驚きました。
どうしてそんなことが起こるのでしょうか?
さらに研究を進めると、驚くべきライフサイクルを持つサンショウウオのような水生の脊椎動物を発見します。