リントナー財務相の提案はショルツ首相やハベック経済相から譲歩を得るためといった次元ではなく、抜本的なFDPの政策を総括したものだ。ショルツ政権が今後数週間で、2025年の連邦予算案、成長促進策、年金制度改革などの重要なプロジェクトを推進しなければならない時だけに、与党内の対立を煽る提案書の発表はタイミングが悪い。景気の低迷に対して連邦政府がどのように対応すべきかについて意見の調整が求められているからだ。
リントナー財務相の「離婚宣言」の背後には、9月に実施された東部3州の州議会選で壊滅的な結果を受け、連邦議会選挙での勝機を得るため、連立からの離脱を決めたのではないか、といった憶測が出てくるわけだ。当然の憶測だ。ショルツ船に沈没するまで乗っていたら、次期総選挙でFDPはひょっとしたら連邦議会から完全に姿を消すかもしれない。そんな危機感がFDPの党幹部たちに出てきたのだ。
ショルツ首相は3日、首相府でSPD首脳陣を集め会議を開き、その後、リントナー財務省を迎えて話し合っている。今後数日間、ショルツ首相はハーベック経済相およびリントナー財務省の三者会談を開き、意見の調整というより、連立政権を維持するか、否かを突き詰めて話し合うのではないか。
ドイツ民間ニュース専門局ntvはショルツ政権の今後の見通しとして2つのシナリオを予想している。FDPが連立から離脱し、ショルツ首相は「緑の党」と少数政権を任期満了まで続けるか、早期連邦選挙の実施に向かうかだ。
ntvのニコラウス・ブローメ記者は3日、「リントナー財務大臣が今週見せた行動は、軽率で無謀とさえ言えそうだ。彼が提出した経済・財政政策に関する提案書は、あたかも連立相手に対する挑発であるかのようだ。このリストは、強力な自由主義政党が連立交渉に臨む際の出発点の提案書のように見えるが、実際にはFDPは強くなく、連立も始まりではなく終わりに近づいている」と指摘。同時に、「多くの点でリントナーは少なくとも正しい問いを投げかけ、さらには正しい回答さえ提示している」と述べている。