「昔はよかったオジサン」は終身雇用、結婚率の高さ、所得などを引き合いに出して、今はダメで昔は良かったと主張する事が多い。すでに犯罪についていえば平和になった事実を取り上げたので、他の要素も考えたい。

まず終身雇用についていえば、確かにこの制度自体は崩壊してしまったと言える。だが、本当に制度自体良かったのかを今一度評価する必要がある。

終身雇用が常識の社会というのは、裏を返せば極めて労働流動性が低いということである。つまり、「就職」は実質「就社」であり、新卒後の会社に人生の生殺与奪を預けるという意味合いが強くなる。

そうなると転職は独立は今ほど気軽に出来ず、勤務先で嫌われたり出世の道が閉ざされてしまえば、そのままその後の人生の生き方も決定づけられてしまう。これは少なくとも能力の高い人や、集団行動では能力を発揮しづらい人材には地獄のような制度だ。勤務先のたった一度のつまづきで、一生が決定してしまう社会は、挑戦はご法度、上司からの指示に愚直に従うのが最適解だからだ。

実際、かつての日本は工業製品を輸出することで稼ぐ加工貿易立国であり、大規模工場に大量の社員が出社し、同じ時間、同じように働くワークスタイルだった。そこで必要とされるのはクリエイティビティに優れた人材というより、上司からの指示に愚直に従い、長時間労働する人材だった。

現在のように様々な選択肢がある社会の方が、労働者側に魅力的ではないだろうか。

みんな結婚する社会

また、誰もが結婚をする社会というのは、本当に健全であったかは疑わしい。筆者は結婚分野について完全に門外漢であるため、下記の論拠は世間でよく見る専門家の意見を借りることにしたい。

現在起きている現象の理由の一つに、独身男性の所得が低いため、婚活の土俵に立つことができないことで未婚率が高まったという主張がある。この仮説が正しいとするなら、分厚い中間層が消えて急速に貧富の格差が広がっている現状の日本経済と辻褄が合う。このような「結婚をしたいが経済力不足でできない」という状況は明確に是正の必要があり、その手段として収益率の高いイノベーション企業が数多く生まれる社会を望むべきだろう。