4.人材と技術の転換 電動化とデジタル化の進展に伴い、新たな技術やデジタルスキルを持つ人材の需要が急増してきたが、従来の内燃機関を中心とした製造工程や技術に特化していたドイツの自動車産業では、スキルセットの転換が必要となってきた。具体的には、技術者の再教育や新たな人材の採用が急務となり、企業は大規模な再編を迫られている。

5.脱炭素化と環境規制 ドイツ国内では環境問題への関心が高く、政府も再生可能エネルギーの利用拡大や、排出削減に向けた政策を進めている。これに伴い、自動車産業には脱炭素化の圧力がかかっており、電動車以外にも水素燃料車など新しいエネルギー技術の開発が求められている。しかし、このような新技術への移行には多大な投資と時間が必要であり、自動車メーカーにとっては大きな負担となっている。

6.EUからの規制強化 ドイツはEUの一員として、EUが定める厳しい排出基準やエネルギー政策に従う必要がある。EUは気候変動対策を積極的に推進しており、二酸化炭素排出削減目標を設けている。これにより、自動車メーカーは一層の電動化を求められる一方で、技術開発や生産設備の更新に多額のコストがかかる。この規制強化も、ドイツの自動車産業が試練に直面する要因の一つだ。

欧州最大の自動車展示会「ミュンヘンIAAモビリティ」が昨年9月開催され、世界のトップメーカーが最新の電気自動車(EV)を展示した。展示場では中国のEV大手、BYDが新たな2車種を展示し、欧州のEV市場に本格的に進出してきた。EVの最新の技術ではアジア系メーカーが目立った。具体的には、充電時間の短縮や価格争いでメイド・イン・ジャーマニーのEVは激しい競争にさらされている。

なお、低迷が続くフォルクスワーゲン(VW)グループは、現在進行中の賃金交渉で、長年勤続している社員に対するボーナス支給の廃止も検討している。その一環として、勤続記念の報奨金が廃止される見込みだ。VWは賃金交渉において10%の賃下げを含むコスト削減策を進めたい考えで、経営陣は自動車メーカーとしての競争力の低下を懸念している。