ウクライナ戦争で重宝されてきたが
外部への秘蔵性が高いという評判を持つテレグラムは、統制が厳しい国では当局の検閲をかいくぐるアプリとして重宝されてきた。
2022年勃発のウクライナ戦争では、多くのウクライナ市民が空襲や家族・友人たちの安否をリアルタイムで追った。ウクライナのゼレンスキー大統領のほかに前線にいる兵士らも愛用している。
ロシア市民にとっても、テレグラムは貴重な情報源となってきた。フェイスブックやXの利用がブロックされる中、テレグラムはほとんど制限なく使えるという。
韓国では、テレグラムを使うデジタルの性犯罪が大問題となっている。若い女性がソーシャルメディアに投稿した画像をAIソフトを使ってポルノ画像にし、これをテレグラムで拡散する。8月27日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニュル)大統領は「犯罪の根絶」を誓っているが、抜本的対策まで行き着くだろうか。
一方、ブラジルでは最高裁がXのブラジル国内でのサービス停止を命じた(8月30日)。最高裁は偽情報対策をめぐり、Xの所有者マスク氏と対立し、許可無くXにアクセスした個人や企業には罰金を科すと宣言した。
違法コンテンツの監督・監視の責任を大手プラットフォームに求める動きはこれからトレンドになっていくのかどうか。注視していきたい。
BBCの「アトミック・ピープル」最後に、来年、第2次世界大戦の終了から80年となるが、これに先駆けて7月末、英BBCで放送された「アトミック・ピープル」に触れておきたい。1945年8月、広島と長崎に投下された原爆の被爆者らにその体験を聞いてまとめた。共同監督は日英で育ったインマン恵氏だ。2023年3月にBBCで放送された番組「J-POPの捕食者秘められたスキャンダル」は、日本で大きな反響を巻き起こしたが、インマン氏はこの番組の監督・プロデューサーだった。
日本人として、筆者は原爆やその被害についての一定の知識を持っているつもりだったが、被爆当時子供だった人々の体験をその言葉を通して聞いたことで被害のすさまじさがリアルに伝わってきた。ウクライナ戦争、ガザ紛争など戦争の怖さがお茶の間から伝わってくるようになった今、日本でもぜひ放送されてほしい番組である。