発電所脇の山道を登っていくとそこに現れるのがレンガ造りの猿島要塞。もともとこの部分は小高い丘だったのですが、明治期に陸軍が丘を削り、3年の月日をかけて通路を作り、レンガ造りの要塞を作りあげました。かつては兵舎や弾薬庫として使われましたが今は使う人のないどこか寂しげなレンガ造りの建物。「天空の城ラピュタ」に似ていることもあり、猿島は「ラピュタの島」と呼ばれています。

左手の壁から出ているL字の金具は先ほどの発電所で発電した電気を送るための電線を引っ掛けるためのもの。

階段上には大砲が置かれ、弾薬庫から滑車で弾薬を吊り上げていました。有事の際には兵隊はここを上り戦闘態勢に入ります。

トンネルを通って島の北側へ。このトンネルも兵舎や弾薬庫として活用されました。レンガの建物が多いですがこのトンネルのレンガの積み方は長辺と短辺を交互に並べる「フランス積み」。

レンガ造りの建物を最も美しく見せる積み方であるとして明治初期に好んで採用されたものであり、富岡製糸場もこの積み方でした。その後、長辺のみの列と短辺だけの列を交互に積んでいく「イギリス積み」の方が強度が強いという理由で主流となりフランス積みは衰退していきました。フランス積みのレンガ造りの建物が今も残っているということで建築学的にも貴重な施設です。

明治期に造られた美しいレンガトンネルを抜けて次の場所へ向かう私たち観光客一行。

先述したように弾薬はこのような穴から滑車で吊り上げて砲台に運んでいました。

ガイドツアーの最後に案内されたのはこの砲台跡。時代は変わり太平洋戦争期に砲台が置かれた場所です。明治期に造られた兵舎や弾薬庫はもう使われていませんでしたが、地理的条件からくる猿島の軍事的な重要性は昭和期においても健在であり、ここに新たに砲台が置かれて東京湾を防衛しました。

今は観光で賑わいススキの穂が静かに揺れる穏やかな島ですが、かつては国防の重要拠点とされてきました。実戦で使われることはありませんでしたが、それがなにより幸いです。