昆虫食ビジネスではない
立石氏によると、コオロギ1gに含まれるタンパク質の量は牛肉の4倍だ。そのうえ育てるために必要な飼育スペース・コストは牛の10分の1であり、飼育による環境負荷は小さい。だが昨今、インフルエンサーによる非難が相次ぐなど、昆虫食は何かと賛否を巻き起している。
「コオロギは高い栄養価があると聞いたことがあります。人の食用になるコオロギもあるんですよね? フードリソースさんで扱うコオロギは何として売られるのですか?」(清水さん)
「無印良品でも『コオロギせんべい』が販売されるなど、確かに食用コオロギは話題になっていますよね。でも、我々のコオロギは食用にはしないんです。コオロギをメーカーさんに卸すのですが、そこでは例えば牛などの家畜の飼料となるほか、タイ・ヒラメなどの養殖魚の餌にもなります。化粧品の原料としても使われています。」(立石氏)
食用だと思い込んでいただけに、意外だという反応を見せる清水さん。「なぜ食用にしないのか」という質問に対し、再び立石氏は思いを熱く語る。
「円安で輸入品の飼料が高騰する昨今、食料争奪戦の時代が来るのではないかと我々は危惧しています。でも国産のコオロギを増やせば、世界の食料争奪戦に巻き込まれなくて済む。栄養価の高いコオロギは有効活用できる余地が大きいと考えています。ちょっと難しい話ですが、食物連鎖の下の方にあるコオロギを増やすことで、上位捕食者である人間の食料も確保できるようになるんです」(立石氏)
コオロギを人が食べるのは、どうしても抵抗がある。それならば、人間が食べる動物の飼料にしようという考えだ。飼料の“国消国産”化につながり、ひいては食料の安定供給をもたらす。