こうしてキスは愛情表現や社会的絆を深める行為として、のちに生まれる現生人類(ホモ・サピエンス)に引き継がれていった可能性があります。
あとはこれが人類の文化発展の中で、古代ローマに見られたように、様々な意味合いや目的を持ったキスの仕方が生まれるに至ったわけです。
検討すべき問題も
しかしラメイラ氏の主張はやはり仮説の域を出ておらず、検討すべき問題がたくさんあります。
例えば、米ネバダ大学の研究によると、世界各地にある168の文化圏を調べた結果、愛情表現や性的な意味合いでのキス習慣がある文化圏は全体の46%に過ぎませんでした(American Anthropologist, 2015)。
狩猟採集生活を続ける先住民族の中にはキスを全くしない文化圏も多くありましたし、中にはキスを嫌悪する文化も少なくありませんでした。
つまり、キスは人類全体が好んでしてきた普遍的な行動ではなく、類人猿の祖先から人類に受け継がれたものでもない可能性があるのです。
そのため、キスはその習慣が古くから普遍的かつ根強く存在する西洋文化圏を中心に生まれた行為であるとも考えられています。
さて、キスは類人猿の祖先時代からあったのか、人間が生み出した純粋に文化的な行動なのか、まだまだキスの謎は続きそうです。
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参考文献
Why Do We Kiss? Its Evolutionary Roots May Lie In The “Groomer’s Final Kiss Hypothesis”
https://www.iflscience.com/why-do-we-kiss-its-evolutionary-roots-may-lie-in-the-groomers-final-kiss-hypothesis-76548