「指定管理者制度」では、改築や更新は指定管理者の業務範囲に含まれないことが多く、札幌ドームについても、いわゆる改築や更新は所有者である札幌市が行っています。
一方で、「コンセッション方式」では、民間事業者が改築や更新も行うことができるため、自治体が詳細に仕様を規定して発注する場合に比べて、費用を抑えられることが期待されます。
札幌ドームの場合、例えば札幌市が10億円を投じた「新モード」の暗幕についても、仮にこれを民間事業者が自社の費用で改築を行うとすれば、本当にこの投資の判断に至ったかどうかは疑問が残るところです。
少なくとも、事前のニーズ調査を綿密に行い、更には、多額の投資をしたからには何としても投資を回収するべく、「新モード」の利用促進にあらゆる努力があって然るべきであり、「10億円投資したが殆ど利用されなかった」という結果は回避できたのではないかと考えます。
第3に、利用料金の変更が柔軟に認められる点です。
「指定管理者制度」では、利用料金の変更には首長の「承認」が必要である一方、「コンセッション方式」では「届出」によって柔軟に変更することが可能とされています。
ドームツアーの事例が物語るように、もし札幌ドームの利用が伸び悩む原因が「利用料金」にあるとすれば、やはり利用料金を柔軟に見直すしかありません。
特に、「新モード」のように、まだあまり知られていないサービスであれば、例えば最初のうちは採算を重視しない低額の利用料金を設定し、まずは多くの人に利用して頂いた上で、その後の20年以上にわたる長期的な経営の中で、トータルで採算を考える等の戦略もあり得るかもしれません。
このように、民間では当たり前のように行われていることを、当たり前に行うことができる点が、コンセッション方式の大きな利点です。
第4に、災害・緊急事態等発生時には公共施設としての機能を発揮できる点です。
公共施設である札幌ドームは、災害時には物資の集積拠点等として重要な役割も担います。
管理運営する民間事業者の裁量が大きくなる点に対して、災害・緊急事態等発生時に公共施設としての機能を発揮できなくなることを危惧する声も想定されるところです。
しかし、コンセッション方式では、あくまで所有権は自治体に残したままであるため、有事の際には公共施設としての役割を果たすことが契約内容に盛り込まれ、その条件の下で事業者を募集することが一般的です。
例えば、既にコンセッション方式が導入されている東京都の「有明アリーナ」についても、その契約書の中で「運営権者は、都の要請に従い、災害・緊急事態等発生時の本施設の利用等に協力しなければならない」と定められています。
4.あらゆる可能性について早急に議論を2023年10月18日の札幌市議会決算特別委員会では、「今後、株式会社札幌ドームの経営安定化が図られなかった場合、他の事業者への交代や、より良い提案を求める意味合いにおいても、次回以降の指定管理期間は事業者を公募によって募集すべきではないか」との私の質疑に対して、「仮に、経営安定化が図られず、公の施設としての利用に影響が生じる場合には、管理運営方法の在り方について、広く検討する必要がある」との答弁がありました。
その上で、私からは「民間事業者への売却」も含めた、あらゆる可能性について検討を行うよう要望させて頂きました。
もちろん、現行の管理運営方法の下で、経営安定化に全力で取り組むことは重要です。
しかし、一方で、「指定管理者の交代」や「コンセッション方式の導入」等を検討する場合、やはりどこかで現行の管理運営方法に「見切り」をつけて、新たな管理運営方法について早急に議論を始めなければなりません。
現在の指定管理期間が2027年度で終了することを踏まえれば、もう議論をする時間はそう多くは残されていません。
今後も、市民の皆さんとともに建設的な議論を行うべく、あらゆる可能性や選択肢について引き続き探究し、提言して参ります。