報告書は、未成年者を性的に虐待した聖職者が今後迅速に辞職することを要求している。教皇庁児童保護委員会の提言の一つで、正当な理由があれば「辞職手続きを加速させる」と助言している。この手続きが疑惑段階で行われるのか、教会法や刑事手続きの後に行われるのかについては明記されていない。

報告書ではまた、データ収集の透明性向上や、被害者支援のための標準化された報告体制や支援サービスの導入も求めている。

先述したように、同報告書は聖職者の未成年者への性的虐待件数や実例については言及されていない。信頼できるデータの収集が遅れていることをその理由に挙げている。その点、報告書は不十分と言わざるを得ない。

教会は聖職者の未成年者への性的虐待を久しく隠蔽してきた歴史がある。明らかになっては困るような事例が数多くあるはずだ。「教皇庁児童保護委員会」の報告書が単なるバチカンの対策へのアリバイとなってはならない。可能な限り、迅速に、世界のカトリック教会での聖職者による未成年者への性的虐待総件数を公表すべきだ。それができないとすれば、聖職者の性犯罪へのバチカン側の真剣度と熱意が疑われても仕方がないだろう。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。