フランシスコ教皇の呼び掛けで2014年に設立された「教皇庁未成年者保護委員会」は29日、聖職者らによる未成年者への性的虐待問題に関する包括的な報告書を発表した。50頁に及ぶ報告書では、新たな聖職者の性犯罪件数など数字は含まれていないが、教会や関連施設での聖職者の性犯罪が多発してきた背景について言及し、「教会は明らかに失敗した」と指摘している。

バチカンニュースとのインタビューに答える「教皇庁未成年者保護委員会」委員長のオマリー枢機卿(左)(2024年10月29日、バチカンニュースから)

設立から10年後、教会における虐待防止の現状について、「教皇庁未成年者保護委員会」(委員長・ショーン・パトリック・オマリー枢機卿)が教会共同体やローマ教皇庁内で行われた調査や研究の 結果をまとめたもので、5つの大陸を対象としている。報告書は教会側の対応の進展を強調しつつ、地域的な課題や緊急対策の必要な分野を明らかにしている。

オマリー枢機卿は、報告書の発表に際し、被害者に向けて「あなた方の苦しみと傷が、私たちに教会としての失敗を気づかせ、最も必要とされていたときに被害者を守らず、理解しようともしなかったことを私たちに悟らせた」と説明。また、被害者や生存者による「勇敢な証言」を称賛し、「私たちは、あなた方が空虚な言葉にうんざりしていることを知っている。私たちが何をしても、起こったことを完全に癒すには不十分であることを理解しているが、この報告書を通じて、教会内で二度と同じことが起こらないようにするという約束を強化したいと願っている」と話している。報告書の表紙には被害者の回復力を象徴するバオバブの木(別名「生命の木」)が描かれている。

報告書では、教会全体における虐待件数や、各国での教会法上の手続きの進行状況について包括的な情報はない。多くの国から信頼できるデータが得られていないためだ。その代わりに、報告書では虐待事例に対応するバチカン当局や各地域の教会での改善提案が示されている。