マスコミが報道しなければ、その事実は存在しないに等しい。さらにナチス・ドイツの宣伝大臣であったヨーゼフ・ゲッベルスが語ったとされる有名な言葉「嘘も百回言えば真実となる」を地で行くマスコミの報道姿勢によって、世論だけでなく選挙の成り行きが左右された。そして、開票速報はナチスがユダヤ人に着用させたダビデの星さながらの裏金マークを特定の議員に貼り付けたのだった。

怒りや妬みを生み出すマスコミ

選挙を左右したのは裏金議員報道だけではなかった。この問題で非公認となった候補者へ自民党から2000万円が振り込まれたと伝える報道は、候補者の周辺から「逆風が突風になった」と悲鳴があがるほど影響を与えた。立憲民主党の落下傘候補に追い上げられていた萩生田光一氏は、振り込みは「ありがた迷惑」と全額返金している。

2000万円は、自民党公認候補に支給される公認費500万円と活動費1500万円を合算したもので、非公認となった候補者が代表を務める政党支部に活動費として振り込まれたものだった。

あるテレビ番組では、立憲民主党の野田代表が「裏の公認料」などと語る発言を伝えたあと、アナウンサーと記者が「適切なお金なのかどうか」「いわゆる選挙戦で裏金議員と言われる人たちにプラスになるのか」などと語った。また、日本共産党は「税金を使って活動資金2000万円」と題するチラシを作成し配布した。

国から政党助成金を受け取っていない日本共産党は「(自民党が)税金を使って活動資金」を配ったと言っているが、他の政党も政党助成金を受け候補者に選挙活動の支援金を配っているのは変わりない。だが、マスコミが説明しなければなかったも同然で、自民党が裏金議員に税金をばら撒いたように印象づけられた。こうして、裏金の悪評の上に「裏公認2000万円」の悪評が建て増しされたのだった。

裏金議員とされた候補者の選挙運動を手伝っていたポランティアは「裏金の出どころは税金。さらに2000万円もの不正な金銭を税金から掠め取ったと信じ込んでいる人が多い。こういう人たちは、いくら説明しても誤解を解いてくれない」と語っていた。