北朝鮮は、イランとも40年以上にわたって密接な関係を維持し、ヒズボラなどの主要な武器支援国だった。冷戦時代、北朝鮮はヒズボラに多連装ロケット発射機を供給し、ヒズボラが特殊戦技術を学ぶために北朝鮮を訪問した。北朝鮮は、ハマスとも友好的な関係を結び、2023年10月のイスラエル・ハマス戦争では、ハマスが北朝鮮製の多連装ロケット弾やRPG-7(ソ連が開発した携帯対戦車擲弾発射器。北朝鮮製はF-7と呼称)を多用した。

これほど北朝鮮がイランとその支援組織「ヒズボラ」「ハマス」などと密接な関係を維持し、強力な軍事支援を続けて来られたのはなぜなのだろうか。

それは米バイデン政権による北朝鮮政策が大きな要因として、その責めが向けられよう。同政権は、北朝鮮が東アジアや中東の安全保障に与える影響力と北朝鮮国内の圧政に苦しむ人々の人権問題に対する関心が著しく低かった。事実、北朝鮮対応の担当者は大きく削減された。そのため、金正恩政権は、中東ばかりではなく、ロシアのウクライナ戦争に対する武器弾薬の支援など米国や欧州など西側諸国の国益に反する行動をとる余地ができたのだ。

現在、ロシア軍は深刻な兵力不足に陥っており、派遣された北朝鮮軍がどれだけロシア軍の兵力不足を補えるのかは未知数であるが、ここに来て、北朝鮮が戦闘部隊を本格的に派遣したことは、ロシアと肩を並べてウクライナへの共同侵略国となったのと同じことになる。

ウクライナ戦争の戦後処理になれば、金正恩氏はプーチン氏と並んで「人道に反する罪」などの戦争犯罪人として重い咎(とが)を背負わされる可能性さえある。北朝鮮は、超えてはならないレッドラインを超えたのである。

【参考資料】

「ロシア入りした北朝鮮兵は「弾除けの傭兵にすぎない」 派兵を秘匿…精鋭部隊の特異な実態」 2024年10月26日、産経新聞 「金正恩氏、兵器の大量生産指示 対ロシア輸出も推進か」2023年8月10日、日経新聞 「ロシア以外にも」北朝鮮人民軍海外派遣の軌跡、戦闘機パイロットなどベトナム、エジプトなどで実績」2024年10月21日、東洋経済オンライン