するとラン藻シートに吸着した金の濃度は、1トン当たり最大約30グラムと高濃度であり、温泉水中の他の元素(ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム等)に比べ1〜2桁高い結果となりました。

世界の主要な金鉱山での採掘量が、1トンあたり3グラムから5グラム程度であることを考えると、この結果は驚異的な数値です。

また、今回の回収試験の結果から、他の元素が溶液中に混在する場合でも、ラン藻シートは金のみを優先的に濃縮して吸着するという特性も確認されています。

以下の図はラン藻シートに結合した金(Au)の様子を顕微鏡を使って撮影したものになります。

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玉川温泉で実施された金の回収試験でラン藻シートに析出した金や鉱物の状況。(a) 多くのバライト(重晶石)粒子、(b) ケイ素鉱物を伴うバライト粒子、(c~f) ラン藻シート上に析出した金の粒子、(e) 赤い点線の四角形内は金の粒子の拡大画像(Brtはバライト、Auは金の粒子)、を各々示しています。 / Credit : 野崎達生ら, Nature(2024)

このラン藻シートを活用することで、温泉水や鉱山廃水のような金の含有が乏しい溶液からでも、環境への負荷を抑えながら金を回収できる可能性があります。

コスト面を考えると、アクセスが厳しい海底熱水鉱床より温泉地で金を抽出していく、という方法がより現実的と言えるでしょう。

(※他にも、都市鉱山の金属を含有する工業廃液等も有力な候補にあがっています)

今回の発見は、温泉に対する私たちの見方を変えるきっかけになるかもしれません。

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参考文献

エネルギー・金属鉱物資源機構公式サイト
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_000295.html#:~:text

元論文

In situ gold adsorption experiment at an acidic hot spring using a blue-green algal sheet
https://doi.org/10.1038/s41598-024-56263-3