実は私にもビジネスの哲学があります。長年住宅を作ってきた中でデベロッパーとは何であるべきか、というテーマです。私の結論は「ライフを生み出し、コミュニティを介した人間関係を作る場」を提供しているのだと考えています。カナダで高層マンションを建築していると仮囲いは一階部分しかないのでコンクリートの躯体がどんどん上がっていくのがよく見えます。私はそれを見ながら「この四角いコンクリートの壁の内側を数千万円から億単位の金額で売るのが私の仕事ではない、そこに居住する人がどれだけ幸せになれるかそして同じような思いの人たちがコンクリートの壁を隔てたところで共有する関係から建物全体のコミュニティを創造するのが私の仕事」と考えたのです。私がまだ35歳ぐらいの時です。

それ以降、木造も含め、ずいぶん作ってきましたが分譲マンション以外は自分で作った建物を自分で所有し、賃貸しながらコミュニティを作り上げる演出をずっとしてきています。アパートの大家が不動産屋に仲介から賃借人とのやり取りまで全部任せ、自分は銀行口座に振り込まれる家賃ににんまりしているというのは私のスタイルではないのです。だから不動産屋に仲介もお願いせず、集客は全部自前で行い、潜在顧客とやり取りして入居者を決め、入居後の一切合切も全部自分たちでやるのです。私の役割は住民にとってのコンシェルジュなのです。

日本でシニアが家で転倒して骨折した話をよく耳にします。シニアが骨折すると生活テンポがそこで狂ってしまい、たとえ治癒後も元のペースに戻せなくなるケースを多々目にしてきました。家で転倒し骨折しないようにすることはシニアケアのビジネスもしている私としては大きな意味があります。そこで出会ったのが「ころやわ」の商品名で名が知られてきたマジック シールズ社の社長。同氏と何度か会い、カナダに輸出し試したところ、素晴らしい成果があり、実際にシニアの方が何度か転倒しても骨折しなかったのです。今、私は「ころやわ」を大量輸入している最中です。同社社長とこの製品の普及をカナダで展開させるため仕組みを作り上げるのです。その社長も志があるのです。どうやったら骨折しないか、機能性を高めることに注力してきたわけです。素晴らしいアイディアマンで私は良い方に出会ったと思っています。