コロナが生み出した異業種参入も基本的にはだめだと思います。理由は事業をするのではなく、雇用を確保することに主眼があったからです。もちろん、経営者の気持ちとして雇用確保は大事でしょう。しかし、やったこともない事業に借金して手を出すことが正しいのかは別問題です。憚れるので名は出しませんが、事実それで苦しんでいる大手上場企業もあるのです。
ブルームバーグに冷淡な記事があります。「『ゾンビ企業』の淘汰加速か、日銀利上げで耐えきれなくなる公算大」と題しており、記事のポイントは「東京商工リサーチによると、ゾンビ企業は日本の上場企業の14%を占めている」とされる中、「倒産件数の増加は避けられないが、だからといってこれらの企業全てを倒産に追い込むべきではなく、どの企業をどのように支援できるかを決めることが課題」だという点に集約されます。つまりできの悪い企業をフィルターにかけるのです。
日本は護送船団方式などを通じて企業に等しく支援することで雇用を守ることを第一義としています。このやり方はかつては意味があることだったのですが、多少、変えていかねばならない時代にあるとみています。それは従業員の能力発掘であり、時代の変化に対応しうるフレキビリティを持たせることです。いくら社内のルールに明るくても一歩外に出ればまるで使い物にならない従業員の話はごまんとあります。そうではなく、従業員に真の能力をつけさせ、労働力をある程度流動化させることで被雇用者は転職による待遇改善や才能発掘になり、企業はより従業員に魅力的な業務とオファーを提示することでウィンウィンの関係になれるのです。
つまり大企業がよくやる「出向」で全く未経験の分野に突然出すような無謀な人事ではなく、適材適所とエキスパートの育成によるプロ集団を作ることだと考えています。
一方、中小企業では「その存在価値とは何か」に集約されます。私は企業経営において付加価値を生むものが私企業の使命だと考えています。ところが一部の企業は赤字覚悟とか従業員の給与が出ればよしというところもあります。それではNPOと何ら変わらないのです。企業経営は価値の創造だという根本思想が抜けているのです。もしその事業がとても先進的で誰もやったことがない事業なら私はもちろん背中を押します。が、レッドオーシャンの中、ガチンコ価格勝負で利益ゼロしか見込めないなら止めた方がいいのです。