しかし田中監督は、センターバックを相手FWのマンマークに付け、時には中盤の位置にまで上がる最新戦術「バルトラロール(ベティスの元スペイン代表DFマルク・バルトラが由来)」を採用するも、開幕2連敗スタートとなり、その後連勝したが、田中・柳下体制での連勝は一度きり。チームは低空飛行を続け、4月21日の第11節鹿児島ユナイテッド戦(白波スタジアム1-2)から、5月19日ホームの第16節ベガルタ仙台戦(1-2)まで6連敗を喫してしまう。

その間、5月14日には田中監督と柳下ヘッドが解任。後任には大分トリニータ(2001-03)、セレッソ大阪(2004-06)、モンテディオ山形(2008-11)、徳島ヴォルティス(2016-17)、清水(2016-17)、ギラヴァンツ北九州(2019-21、2023)と、Jクラブの監督経験が豊富で、守備戦術の構築には定評がある小林監督が就任した。

しかし、一度狂った歯車を修正することができないまま、前半戦を降格圏内の19位で折り返し、小林体制初勝利は、6月16日第20節の大分戦(レゾナックドーム大分2-0)まで待たされることになる。

試合結果だけ見ると一方的に圧倒された大敗続きというわけではなく、清水戦の18敗目を含め、1点差負けが12試合と勝負弱さが目立つ。清水戦前の4試合では1勝3分けと持ち直したが、時すでに遅しといった印象が否めない。

12試合にも上る1点差負け試合のなかで、せめて半分でも引き分けに持ち込めていればこのような結末を迎えることはなかったであろうが、得点数が試合数よりも少ない「33」という得点力不足も、低迷を招いた一因だろう。

FW南野遥海 写真:Getty Images

小林監督の続投が好ましい理由

栃木の過去の指揮官は、田坂和昭監督(2019-21)、時崎悠監督(2022-23)と、J3福島ユナイテッドから招聘する人事が続いた。田坂体制下では守備偏重の戦術を採用したものの得点力不足に悩み、時崎体制となり今度は攻撃的サッカーを志向したものの失点癖が止まらなくなるなど、チームカラーが一貫しなかった。