VARのないJ2において、失点したチームからのアピールで判定が覆るという珍しい“事故”によって重要な試合での先制点を取り消されても、小林監督や栃木イレブンは抗議する姿勢も見せず、“ファインゴール”を決めた石田も苦笑いするにとどまった。仮にこれがJ1だったら大問題になるはず。これをすんなりと受け入れた栃木はクリーンという言い方もできるが、逆の視点から見れば、勝負への執念に欠けると思われても致し方ない。
事実、この判定によって清水は勝利を手にしてJ1昇格を決め、栃木はJ3降格となってしまったのだからなおさらだ。“幻のゴール”の後も栃木は試合を支配し、ハイプレスで何度も清水ゴールに迫ったが、前半のうちに先制できなかったことが結果的に響いた。
後半5分に、CKから清水DF住吉ジェラニレショーンに先制点を許すと、小林監督は次々と攻撃のカードを切り、ついにはDFラファエルを投入し前線に配置するなどパワープレーで清水を苦しめ、清水FW北川航也を退場に追い込むなど、最後までがっぷり四つの戦いを見せた。
今季最多の1万6476人を集めたこの一戦。もちろん昇格の瞬間をこの目で見たい清水サポーターが集結したこともあるが、栃木サポーターもコレオでチームを鼓舞し、敗戦の瞬間もブーイングもせず、マナーの良さは心地良かった。しかし、その優しさがこの結果を生んだ一因であるとするならば皮肉な話だ。
2024シーズン低迷を招いた要因は
今2024シーズン栃木は、Jクラブ初指導となる、常葉大サッカー部コーチの元日本代表DF田中誠氏を監督に招聘、ヘッドコーチには前ツエーゲン金沢(2017-2023)監督で、ジュビロ磐田(2003、2009-2011)、北海道コンサドーレ札幌(2004-2006)、アルビレックス新潟(2012-2015)と、Jでの指導経験が豊富な柳下正明氏をヘッドコーチに迎え、開幕を迎えた。