それでも秋葉監督はハーフタイムに動くことはなかったが、セットプレーでスコアを動かす。MF宇野禅斗のCKにDF住吉ジェラニレショーンが右足で合わせ、先制に成功する。

この日の清水は、控えにDFの選手を入れていなかったため、後半20分にMF矢島慎也とMF西澤健太が、後半25分にはFW北川航也とFWドウグラス・タンキと次々と投入され、攻撃の圧を強めていく。

ところが、後半28分には沖が遅延行為でイエローカードを提示され、後半38分には北川が接触プレーの際、相手選手を蹴り上げる報復行為によって一発退場。この主将の愚行によって、残り時間は守り一辺倒にならざるを得なくなり、アディショナルタイム8分を何とか凌ぎ切った清水が薄氷の勝利を手にし、J1の舞台への返り咲きを決めた。


秋葉忠宏監督 写真:Getty Images

このチームではJ1で戦えない

前節、敗戦を喫した山形戦、そしてこの日の栃木戦も、内容度外視で勝利だけを求める相手の気迫に押されるシーンが目立った清水。この日敗れた横浜FC(対ファジアーノ岡山2-4)に代わって首位に立ち、自力でのJ2初優勝も見えてきたが、同時に課題も残された一戦だった。

ネガティブな意味で「相手のサッカーに合わせてしまう」悪癖は相変わらずだ。加えてこの日は、メンバーを大幅に変えたことによってパスミスも目立ち、サイドの攻防でも劣勢に立たされる時間帯も多かった。昇格の瞬間を見届けようと宇都宮まで足を伸ばした大勢のサポーターも、嬉しい反面、このチームではJ1で戦えないと実感したはずだ。

来季2025シーズンから3季ぶりにJ1の舞台で戦うこととなった清水だが、開幕戦にどういったスターティングメンバーとなるのか、全く見えてこない。今季からゼネラルマネージャー(GM)に就任した反町康治氏がどんな補強をしてくるのかという希望と同時に不安も抱えているのだ。