さらに重症化すると眼球乾燥症や失明に至り、また麻疹(はしか)といった重度の感染症を起こす危険性も増加します。
これに対して、ビタミンAを含むサプリメントの摂取が対策として考えられますが、サプリは一時的な栄養補助としては有効ですが、食事全体の質が改善されない限り、長期的なビタミンA欠乏の予防にはなりません。
それよりはビタミンAが豊富な自然の食材を普段から摂取する方が本質的な解決策となります。
(またサプリの過剰摂取は特定の栄養の偏りや副作用を起こす危険性がある)
これを踏まえてチームは「サプリなどの栄養補助食品ではなく、自然な食材から十分なビタミンAを摂取できる方法はないか」と考えました。
そこで考案したのが、β-カロテンを通常より多く生産する「黄金レタス(Golden Lettuce)」の開発だったのです。
どうやって「黄金レタス」を作ったのか?
チームは今回、一般的なレタス(学名:Lactuca sativa)が自然に多くのβ-カロテンを生産できるような方法を模索しました。
しかし問題はそう単純ではなく、大きな課題がありました。
というのもβ-カロテンは通常、植物の細胞内にあって光合成を行う場所として知られる「葉緑体」で生成されます。
β-カロテンを増やすならば当然、葉緑体におけるβ-カロテンの生産量を増やす方法がいの一番に考えられるでしょう。
ところが葉緑体の中でβ-カロテンが増えすぎると、電気回路に過度な負荷がかかってショートしてしまうように、光合成が正常に機能しなくなるのです。
そうなると植物自体が枯れて死んでしまうので、元も子もありません。