傲慢で金銭欲の強い会長

ルビアレス氏の素業に問題があったというのは、彼が会長という地位を利用して、それを金儲けに繋げようという姿勢が関係者の間で見え見えだったからだ。彼は金銭欲が強く、傲慢で他人の意見を受け入れない性格。彼を会長にすること事体に当初から反対していた関係者も多くいた。

彼の素業で一番問題視されたのは、スーパーカップをスペイン国内ではなく、サウジアラビアで2029年まで開催することを秘密裡に進めていたことであった。

これまでスーパーカップはリーグ優勝チームと国王杯の勝者チームがスペイン国内で戦うことになっていた。ところが、新たなスーパーカップはリーグ戦の上位2チームと国王杯の優勝チームと準優勝チームの4チームで競うものにして、それをサウジアラビアで開催することにしたのである。その為に毎年サッカー連盟は4000万ユーロ(48億円)をサウジアラビアの公的企業セラ(SELA)から受け取ることになっていた。

更に、バルセロナのジェラール・ピケー氏(契約した時はまだ選手だった)の会社Kosmosにも毎年400万ユーロ(4億8000万円)が同企業から支払われることになっていた。その理由は、Kosmosが双方が契約に結び付く為の仲介をしたということらしい。以上のことがこの開催契約を公にした時点で明らかにされたのである。

問題は、この開催契約が秘密裡に進められていて、2022年まで明らかにされていなかったということである。一旦それが公になると、同年5月にスペインのコーチ育成組織のミゲアンヘル・ガラン会長が民主化の見られないサウジアラビアでスーパーカップを開催することに反対を表明した。更に、スペインチームが公式に外国で試合する場合は政府の公的許可が必要であり、それなく開催契約したことは違法だ、と訴えたのである。

この訴えが動機となって、治安警察の中央作戦部隊(UCO)が捜査に乗り出した。それで判明したのは、それまでのルビアレス氏を会長として彼が信頼を寄せていた連盟の仲間の間で汚職行為、不正行政、資金洗浄の容疑が確認され、先ず7人が逮捕されるという事態に及んだのである。

その時、ルビアレス氏はドミニカ共和国に滞在中で逮捕を免れた。しかし、4月3日に急遽帰国すると、空港で一時的に治安警察によって拘束されたが、逮捕は免れた。しかし、彼の銀行口座などは差し押さえら、これからさらに詳細に捜査が行われることになっている。