- 金融政策の違いと日米金利差
円安の原因だと多くの人が思っているのが、金利差である。確かにこれは影響が大きい。
日本銀行は長年低金利政策を続けており、デフレ脱却を目指してきた。
金利を下げればお金を借りて事業をする人が増え、経済が活性化するという考え方であり、正当な考え方ではある。
一方、アメリカは景気が絶好調モードすぎて賃金も上がり物価も上がり、その上がった物価対策(=インフレ抑制)のために利上げを継続しており、日米金利差が拡大している。
金利差が大きい場合、より高い金利を求めて資金が日本からアメリカに流出する傾向があり、これが円安圧力となる。
例えば日本円で金利0%であれば、100万円持っている人は銀行に預けても金利は得られない。
一方で米ドル金利が5%あるならば、100万円を売って米ドルに替えれば翌年には105万円である。
よって、当然日本円を持っていても意味がないので米ドルに替えたくなるわけである。巨大なマネーが一気に米ドルへ向かう。
コロナ禍には一時的に米国やEU諸国も経済を活性化させるために金利をほぼゼロにしていたが、現在はその反動かインフレが加速し、インフレを抑制するために金利を高くしている。
例えばユーロは金利4.5%、米国も4.5%、大半の国々が金利を高くしているので、日本円はあらゆる通貨に対して下落するというわけである。
さらに円の金利が安いということは、円を借りて高金利の通貨で運用すると儲かるわけで、これを「円キャリートレード」と呼ばれる。
これが活発化すると、日本で円を借りるがすぐに外国通貨に替えられてしまう、つまり円を売って外国通貨を買うことになるので、円安を加速させる。
- 円安の今後の見通し
多くのアナリストたちは、2024年以降も円安が加速する可能性を唱えている。
短期的には
アメリカの利上げ継続: 米国の中央銀行にあたるFRBは、インフレ抑制のために利上げを継続してきたものの、意外とインフレが収まらず、日米金利差が大きい状況が継続する可能性が高いと言われている。 地政学リスクの継続も影響し、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の不安定化など、地政学リスクが継続していて、そうなると原油など資源が高止まりしてしまう。 資源輸入国である日本にとっては円を売って外国通貨を買ってたくさん支払う状況が続き、かつ米国などにとっては原油高により物価に影響し、物価高が終焉しないことにもなる。 日銀が金利を上げていく流れがあるが、米国との金利差が4.5%から4.0%になったとて根本的に変わらないので、日銀による金融政策の変更は、相当な規模にならない限りは大河の一滴扱いになろう。中長期的には
日本企業の海外投資やサービス収支の赤字、少子高齢化による労働力不足など、日本の構造的な問題が解決されない限り、円安傾向は長期化する可能性が高い。円安への対策はどんなものがあろうか。
(1)まずは第一に産業競争力の強化が必要である。
まず製造業であるが、売れるものをとにかく増やすことは、世界中の人々が日本の工場からものを買い、外国通貨を売って日本円を調達して日本円で支払いをしてくれるわけで、日本円のニーズが高まるわけである。
イノベーションの促進、といえば簡単であるが、イノベーションをもたらすのは人材育成であり、組織改革であり、ルールの変更でもある。
例えば優秀な人材を育成しても、外国企業に取られてしまえば日本のためにならない。
外国企業に人が取られるのは、給与的な問題や、働く環境の問題、残る男女差別など、いろんなものがある。大きいのは賃金だろう。
日本の半導体メーカーが500万円しか払わない人材に、Nvidiaならば日本法人でも1000万、アメリカ法人なら2000万払うだろう。
根本的に若手の賃金が低いのは、無能な中高年をクビにできない労働法、年功序列的な賃金制度が原因の1つであり、根本的に日本の労働ルールを変更するべきだと考える。
雇用を流動化させることは、自分の技能を磨き続けなければならないことにもなり、また人手が必要としている産業に人を集めることにもつながる。
努力せず座っているだけの人間を許さないようにできる。
サービス収支に関しても、そもそも日本のデジタル産業が弱すぎることが原因であり、人を作り、それと同時に海外の超大手IT企業に制限をかけていくべきだと考える。
現在はMetaの偽投資広告騒動をみても、日本で傍若無人に行動していることが明らかであり、日本にお金を落とさずに収益だけ持っていってしまうのは良くない。
運の良いことに日本は巨大マーケットの一つであり、政府がルールを作ってしまえば、巨大マーケットを失いたくない巨大IT企業も言うことを聞かざるをえない。
(2)金融政策
日本銀行が金融政策を調整し、金利を引き上げることで、日米金利差を縮小し、円安圧力を軽減することを目指したいだろうが、これは非常に厳しい。
日本は1000兆円以上の国債を発行しており、それの多くを日銀が、残りを金融機関などが保有している。
金利を上げてしまうと、保有している既存国債の価値が下落し、日銀も金融機関も多くの損失を出すことになる。
それだけではなく、金利が上がると日本政府の国債調達(つまり国家予算調達)コストが上がってしまい、1000兆円に至る債務に対して今はゼロ金利に近い状態が、金利が上がることで毎年何兆円どころか何十兆円もの利払いが発生し、日本政府は財政破綻してしまう。
財政破綻は自国通貨の場合は絶対にしない!という主張もあるが、確かにTechnically自国通貨の場合は破綻はないが、実質的に破綻状態になる経済が深刻な打撃を受けることは避けられない。
よって、日本は金利を上げることで通貨を守るという通常のオペレーションが使えない状態にある。
財政破綻を回避するためにジャブジャブと円を擦り続ければ当然円安傾向は止まらず、1ドル200円、300円と円安が続き、資源輸入国の日本では物価の上昇が加速し止まらなくなる。物価上昇=円の価値の下落である。
そうなると円で資産を持ってるとリスクということで、企業も国民もみな円をすて、ドルやユーロを買う。そうすると円の価値は更に下落していき深刻な経済危機となる。
確かに無限に円を発行することは出来るので技術的には”財政破綻していません”となるが、そのうち1ドル=10000円とかになり、ジンバブエとかアルゼンチン、トルコリラのようになっていくことになろう。
まとめ現在の円安は、一時的な要因だけでなく、日本の構造的な問題も背景にあるため、長期化する可能性がある。
日本経済の復活のためには、短期的にはまず米国などの金融政策の影響が大きく、中長期的には産業競争力の強化やインバウンド需要の回復が必要で、金融政策の調整など、多方面からの対策が必要となる。
もしかすると、今後日本は深刻な通貨危機に陥る可能性も出てきているわけで、資産をどうやって守っていくか、良く考えて投資をされたい。
■
もし記事が気に入ったら、ぜひフォローしてほしい。月に2回、おすすめのふるさと納税食品を紹介していて、たまにオススメの本も紹介する。
(編集部より)この記事は、2024年4月29日のゆな先生@JapanTankのポストを、許可を得た上で転載いたしました。当該記事の著作権は著者(ゆな先生)に帰属します。ゆな先生のXのフォローをお願いします!
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?