そのことについて、「働く女性の健康課題に向き合うことで、生産性向上や長期的なキャリア形成にもつながります。当時はタブー視された話題だったので、男性に啓発するのは難しかったですが、男性管理職や経営者層だけを集めてセミナーを実施するなど、地道な活動を行うことで、徐々に男性参加者が増えていきました」と、当時の苦労を振り返りました。
話を聞くなかで、「妻の体調不良はこういう理由かもしれない」といった気づきを得られた男性もいたと話します。一方で、女性の健康についてコミュニケーションが生まれたと同時に、社内でこうした話題を共有することで「セクハラにつながるのでは」といった懸念の声も。
このような意見を受け、本プロジェクトでは「こういう話を聞いたんだけどどう思う?」と、セミナーで学んだ話を第三者の意見として話題に出すことを推奨する工夫もしているそうです。
「更年期症状」で約1.9兆円の経済損失
啓発活動を行うなかで、女性の健康に対する意識の変化は「窓口によって変わる」と語る西山さん。具体的には、「会社の人事や総務、経営者層のアンテナの感度によって、受け取る情報が大きく異なる。特に地方ではその差を感じます」と言及しました。
SNS上でも「なぜ女性ばかりが優遇されているのか。男性の健康も重要だ」という意見を目にすることがあるとインタビューの中でも話題になりました。しかし、メタボ検診をはじめ、「男性の…」と枕詞をつけなくても男性の健康に着目した制度や対策はこれまでもありました。
また、生産年齢人口割合が減少していく日本において、女性の労働力確保は必至です。今や女性活躍推進法が施行され、企業における女性の管理職や役員の比率30%以上を目指す時代。女性が活躍するには、その土台となる女性の健康について、社会全体が考えなければなりません。
論理的に示すには「数値」が大事だと話します。その一例として、2月に経済産業省が公表した「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失」の試算結果を挙げました。細かく見ると、「月経随伴症」約0.6兆円、「更年期症状」約1.9兆円、「婦人科がん」約0.6兆円など、女性特有の健康課題が大きな経済損失であることがわかります。