太陽政策と呼ばれる緊張緩和政策を掲げて南北再統一を進めた故金大中大統領(任期1998年~2003年)は南北関係を兄弟関係と受け取っていた一人だ。「北風」ではなく、「太陽」で北朝鮮国民の凍った心を解かそうと腐心した。しかし、その太陽政策は北側の金正日総書記に利用されただけで終わった。太陽政策を支援していたウィーン大学の北朝鮮問題専門家、ルーディガー・フランク教授は当時、「韓国の太陽政策は徹底していなかったから失敗したのだ。韓国側はもっと北側を支援すべきだった」と指摘していた。韓国側にエサウに全ての財宝を捧げた‘ヤコブの精神’が十分でなかったというわけだ。

ところで、北朝鮮が10月15日に爆破した道路と鉄道は、2001年から2008年にかけて韓国政府から融資された1億3290万ドルをもとに建設されたものだ。金正恩総書記はそれを破壊することで韓国との関係に終止符を打つつもりだったのだろう。南北間の兄弟戦争は危険水域に入ってきた。

北朝鮮はロシアとの間の軍事協定に基づいてロシアへ派兵を決定した。一方、韓国側がキーウ政府から強い要請を受けてウクライナへ武器支援を決めた場合、ウクライナとロシアの戦場で兄弟国の南北は戦いを始めることになる。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年10月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。