行政の監督責任を問う限界

 介護施設の経営は自治体による指導監督のもとで行われており、「ジャルダン」のような事態が生じると行政の監督責任を問う声が出る。

「介護施設の事故や不祥事が出ると、よく『行政は何をやっていたのか』という批判がなされますが、東京都内だけで介護老人福祉施設は580以上、介護老人保健施設は200以上もあり、有料老人ホームを含めるとその数はさらに膨大です。これを都や介護保険の保険者である市町村がすべてを回って細かく監督・指導することは困難です。また、問題が出るたびに規制を強化したからといって、要介護高齢者の増加と介護の担い手不足といった本質的な問題が解決されるわけではありません。要介護状態となった高齢者は施設に入所すれば何とかなるというような考え方も、根本的に考え直す必要があるのではないでしょうか」

 特別養護老人ホームなどの諸経費の大半は介護保険が適用され、介護報酬で賄われる。入居者の自己負担は1~3割、残りが介護保険料と自治体(国・都道府県・市町村)による拠出。介護報酬はサービスごとに定められた人件費率や地域区分の上乗せ割合などで決まるため、介護施設が自由に決められるものではない。収入としては介護報酬のほか、各種補助金・助成金がある。住宅型有料老人ホームは施設自体の費用には介護保険は適用されないが、入居者が外部の介護事業者と契約をして介護サービスを利用した際には介護保険を利用できるため、住宅型有料老人ホームが訪問介護事業所を併設し、そこからヘルパーが派遣されるかたちで事実上の一体経営が行われているケースも多い。

 介護施設の経営は厳しい。厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」によれば、介護施設・事業所の2022年度の平均収支差率(利益率)は介護サービス全体が2.4%であり、介護老人福祉施設はマイナス1.0%、介護老人保健施設はマイナス1.1%と赤字。介護事業者の倒産も増えている。東京商工リサーチの調べによれば、2024年上半期(1-6月)の介護事業者(老人福祉・介護事業)は前年同期比50.0%増の81件となっており、介護保険法が施行された2000年以降で最多となった。

(文=Business Journal編集部、協力=永嶋昌樹/東京都介護福祉士会会長)

提供元・Business Journal

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