誤ったマイナスのイメージが広がる

「ジャルダン」も慢性的な職員不足に陥っていたようだが、介護業界の人手不足は深刻だ。

「多くの施設で人手不足が進んだ結果、無資格者やパート感覚の人、他に仕事が見つからなかった人など、福祉的な志が希薄な人や専門職として養成していくのに適しているとは考えにくい人なども、従来に比べて採用されやすい状況にあります。機械的に人が足りないから、とにかく誰でもいいから入れざるを得ないというのは、本来の福祉のあり方としては適切とはいえないでしょう。

 また、派遣会社経由で入って来る人も、以前は介護職としての訓練を受けた経験者が派遣されてきましたが、現在では福祉・介護の資格や研修歴のない人が派遣されてくることも増え、そのようなことも一般的になりました。一部のモラルがない紹介会社にいたっては、紹介手数料を稼ぐために、ある施設に派遣した人に対して『もっと条件が良い施設が見つかりましたよ』と言って、短期間で引き上げさせるといったことまでやっていると、いくつかの施設関係者から聞いています」

 人手不足が進む要因としては、介護職というものに対するマイナスのイメージが間違ったかたちで広まっている点もあるという。

「よく介護職は賃金が安いといわれますが、何と比較してのことをいっているのかに注意すべきです。まず、介護職は男女比率としては女性のほうが多いということと、日本全体では女性の平均賃金は男性より低いという現実があります。女性は結婚や出産などを契機に職を離れるケースがあるため、男性と比べて昇給する機会が少ないことも影響していると考えられます。パートやアルバイトで雇用されている割合が高いこともあり、男性の正規職員が多い一般産業の昇給度合いや生涯賃金と比較して低いといっても、果たしてそのような比較自体が適切なのかは疑問です。

 また、入所施設の介護職には夜勤があり、夜勤手当なども支給されるため、一部の民間企業より給与が高いというケースもあります。そのような理由から、一概に介護職が低賃金であるとはいえません。

 また、高校生などが介護の仕事に就きたいと希望しても、学校の進路指導担当者や親から反対されるケースが少なからずあるようです。今後、日本ではますます高齢者が増加していき、そこで働く人材が今以上に必要になっていくにもかかわらず、介護の仕事に高い意欲を持つ若者の進路を閉ざすというのは問題があると感じます」(永嶋氏)

 厚生労働省によれば、22年度の介護職員数は約215万人で、26年度時点の必要数は約240万人と試算しており、約25万人増やす必要がある。40年度には約272万人が必要になり、約1.3倍に増やす必要がある。