特にこのアプローチでは、注意と覚醒を制御する脳領域である「視床」がターゲットにされます。
また患者の脳に直接電極を埋め込む侵襲的な方法ではなく、手術なしで頭部の外側から超音波振動を与えて、脳深部のニューロンを再活性化させる非侵襲的な方法もあります。
ここに述べた治療方法はいずれも、昏睡患者の脳の意識スイッチをONにするための有望なアプローチとして注目されています。
それでも、昏睡から覚醒する脳の仕組みが完全に解明されていない以上、患者を100%目覚めさせる方法というのは現時点で存在していません。
またこうした人為的な治療方法で効果が得られるか否かは、患者の脳損傷レベルの程度によっても大きく変わります。
このように昏睡からの目覚めは、脳損傷に対するネットワークの修復状況と、脳が活性化するきっかけが大きな要因となっているようです。
しかし、この条件を人為的に満たして、昏睡から回復させるには問題が複雑すぎるため、まだ医療としては確立できません。
脳はまだまだ未知の領域なのです。
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参考文献
How do people ‘wake up’ from comas?
https://www.livescience.com/health/how-do-people-wake-up-from-comas
UAE woman Munira Abdulla wakes up after 27 years in a coma
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-48020481
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部