「昏睡(こんすい)」とは、呼びかけたり刺激を与えても何の応答もない無反応状態を指し、意識障害の中で最も重いレベルのものです。
昏睡状態の期間は患者によって様々で、数週間〜数カ月のこともあれば、数年〜十数年続くこともあります。
いまだに昏睡状態から覚醒させる確実な治療方法は存在していませんが、一方で、患者の中には何の前触れもなく突如として目を覚ますケースがあります。
今までずっと眠っていた患者が覚醒する理由は一体何なのでしょうか。目覚める人と目覚めない人には、どのような違いがあるのでしょうか?
目次
- 昏睡から目を覚ますまでの最長記録は27年!
- 昏睡から目覚めるには何が必要?
- 人為的に昏睡から目覚めさせる治療方法とは?
昏睡から目を覚ますまでの最長記録は27年!
先ほど述べたように、昏睡状態が続く長さは患者によってそれぞれです。
短ければ数日で目を覚ましますが、通常は2〜5週間続くことが多く、長くなれば数カ月から数年単位で目を覚まさないケースが見られます。
これまでに知られている昏睡状態から目覚めた患者の最長昏睡期間は、1991年に交通事故に遭って以来、27年間も昏睡状態が続いたアラブ首長国連邦(UAE)出身の女性ムニラ・アブドラ(Munira Abdulla)さんの症例です。
事故当時32歳だったアブドラさんは幼い息子を学校に迎えに行く途中、乗っていた車がバスと衝突し、脳に重傷を負いました。
何とか一命は取り留めたものの、昏睡状態に陥り、延命治療を受けながらUAEやロンドンの病院を転々として、最終的にドイツの病院に移送されます。
そこで事故から27年後の2018年にアブドラさんは何の前触れもなく、突如として昏睡状態から意識を取り戻したのです。
病室には事故当時4歳だった彼女の息子のウマルさんがおり、歓喜の瞬間となりました。
ウマルさんはその時を振り返り「私は何年もの間、母が目覚める瞬間を夢に見ていました。それが現実のものとなり、母が最初に口にした言葉は私の名前だったのです」と話しています。