■先祖直伝:津波前に確認された異常

  1. 「地震の後、潮が引いたら高いところへ逃げろ」(岩手県)
     このような異常干潮も、昭和南海地震の前兆を収集した中村不二夫氏によって報告されている。だが、津波襲来の前に必ずしも潮が引くわけではない、という点は要注意だ。
  2. 「大きい地震の後に井戸水がひけば、津波が来る」(徳島県)
     同じく中村不二夫氏の前兆例では、高知市の民家において、南海地震の2~3日前から釣瓶で汲めないほど井戸が枯れたという。井戸の水位が低下するケースも報告されている。

    ■いざ起きてしまったら…!? 3.11以降に有名になった伝承

  3. 「津波てんでんこ」(岩手県)
     津波が来たら各自てんでんばらばらに逃げろという意味。共倒れの悲劇を防ぎ、1人でも生存しようという知恵として3.11以降に有名になった。3.11の津波を記録した映像を見ていると、高台に避難しようとする人々が、特に年配の女性などが後ろを何度も振り返りながら歩いていた様子がわかる。家族や知人を気にしていたのかもしれないが、それによって自分自身が犠牲になる可能性もあるのだから、やはり一目散に逃げるのが正しいだろう。同じ岩手県では「津波と聞いたら欲を捨てて逃げろ」という伝承もあるが、津波到達までまだ時間があると思い込み、家であれもこれもと持ち物を準備してはいけない。そうしている間に津波に呑まれてしまうこともあるからだ。
防災「言い伝え」MAPを徹底検証!「先祖直伝 10の知恵」鵜呑みにしてはいけない伝承も!
(画像=画像はUnsplashのMarkus Kammermannによる,『TOCANA』より 引用)

■しかし、鵜呑みにしてはいけない伝承も……!

「地震が来たら、便所さ行け」(岩手県普代村)  住宅診断士の大久保新氏は、「小さなスペースでも柱がしっかり四つ角にあるから、安全だといわれていたのでしょう。しかし、家屋が倒壊した場合は、屋内のどこにいても危険度は同じです」(女性セブン、2012年3月22日号)と語る。このような言い伝えは、鵜呑みにしては問題がある例だ。

「地震の時は、竹やぶに逃げろ」(宮城県亘理町)  ウェザーニュースが行った減災のための「昔から伝わる知恵や伝承」調査でも、回答者の約10%にあたる人々が同じように回答した。竹やぶでは竹の根が土地を覆い尽くして地面をしっかり守るから地震には強いだろうという発想だが、農林水産省によると、竹の根は浅く、竹やぶ全体が滑るように崩れる土砂災害の事例もあり、必ずしも安全とは限らないという。

■その時、あなたは生き延びることができるか!?

 こうして見てきたように、先人たちの言い伝えは、決して無視してはならないものが多い。ただし、科学的根拠がない伝承もあるため、怪しいと思ったら鵜呑みにせず、関連書籍を読むなど自分なりに確認することをお薦めする。

「防災」というと、日本では食料などの備蓄を真っ先に思い浮かべる人が多いようだが、長年地震を研究してきた筆者は、防災に関係する優先順位を考え直すべきだと考えている。大前提として、やはりその時に命を守ることを最優先に考えるべきなのだ。ところが、日本人の多くは、「自分は災害で死ぬわけがない」と思い込み、津波が発生しても避難しないような、「正常性バイアス」と呼ばれる傾向が強くみられるのだ。昔からの知恵を大いに参考にしつつ、なによりもサバイバルに努めなければならない。 参考:「総務省消防庁 全国災害伝承情報」、「総務省消防庁 防災に関わる『言い伝え』」、「総務省消防庁 添付資料」、「総務省消防庁 防災に関わる『言い伝え』MAP」、「ウェザーニューズ」、ほか

※当記事は2019年の記事を再編集して掲載しています。

文=百瀬直也

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提供元・TOCANA

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