もし、国境を越えるレベルでの遠隔手術が可能になれば、より多くの人を少ない労力で救うことができます。

患者の近くに手術を行える人がいない場合でも、設備さえ整っていれば、他の国からその分野のスペシャリストに手術を行ってもらえるからです。

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磁気で操る内視鏡。性能が向上してきた / Credit:CUHK,ETH Zurich_C(2024)

そして、このような遠隔手術に役立つ技術も整ってきました。

過去10年で、磁気ナビゲーション(磁気により医療機器を操作・誘導する手法)の技術は大きく成長しており、精度の向上、傷つけるリスクの低減が見られます。

そこで今回、チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)と香港中文大学(CUHK)は共同で、ブタを使った内視鏡手術のテストを行い、遠隔手術が可能であることを実証しました。

9300km離れた遠隔手術!手にはPS5のコントローラー

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9300km離れたブタの内視鏡手術を行う実験 / Credit:Bradley James Nelson(ETH Zurich)et al., Advanced Intelligent Systems(2024)

テストでは、スイスの医師が香港のブタの内視鏡手術を遠隔で行いました。

香港側では、ロボットシステムと磁気を用いた内視鏡が使用され、スイスの制御コンソールにリアルタイムでデータが転送されました。

スイスの医師は、送られてくる映像を確認しながら、コントローラーを用いて操作。その操作信号は、香港側のシステムへ送られて内視鏡を動かしました。

そしてこの2つの場所は9300kmも離れていましたが、通信による遅延は300ミリ秒未満に抑えられ、医師はいつもの手術に近い感覚で操作できました。

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内視鏡をブタの胃の中でもUターンさせ、精度の高い遠隔手術が可能であることを実証 / Credit:CUHK,ETH Zurich_CUHK and ETH Zurich successfully conduct world’s first in vivo teleoperated magnetic endoscopy using an animal model, over a distance of 9,300 km between Zurich and Hong Kong(2024)