「シナジー効果」がなくなるからだ。
プライベートブランド「セブンプレミアム」はイトーヨーカドーとのシナジー効果※)なしに維持できない。
※ 複数事業を運営することによる相乗効果
セブンプレミアムの売上額は「1兆4600億円」(2020年度売上)。セブン&アイ国内売上全体の約2割、食品売上の約3割を占める。この強力なプライベートブランドは、イトーヨーカドーなどスーパーストアが持つ、ニーズ収集力や商品開発力、調達力が支えている。セブン&アイはこう反論したのだ。
今、そのセブン&アイがシナジー効果を度外視し「イトーヨーカドー分離」に舵を切ったのは、時間が無いからである。
クシュタールが買収価格をつり上げた。来日し、株主にアプローチもしている。次の決算まであと3か月。時間が無い。(背に腹は変えられない)。社名を「7-Eleven Corporation(仮)」に変える。イトーヨーカドーを統括する「中間持株会社」を設立する。(売却ではない。持っている株を減らすだけだ)。では、どれだけ株数を減らすべきか。
買収防止策としては「好手」持株比率「15%」までだ。
「15%」なら、持分法適用会社※1)として扱われるので、グループの一員という体裁を保つことができる。イトーヨーカドーの赤字の影響も最小化できる。
24年2月期のイトーヨーカドーの赤字額は260億円だった※2)。この影響を、セブン&アイは100%被っている。もし持分が15%だったら、赤字の影響も15%「39億円(260×15%)」に留められたことになる。
このプランは買収防止策としても「好手」となる。以下2つの効果があるからだ。
一つは株主に対するアピールだ。「イトーヨーカドー分離に動いていますよ」と訴え、株売却を抑える効果が期待できる。