「私の声が勝手に売られていたんです。驚きました」悲痛な表情でこう訴えたのは、「ドラゴンボール」フリーザ役や、「それいけ!アンパンマン」ばいきんまん役で知られる人気声優「中尾隆聖」さん。

 YouTubeやX、TikTokに公開された動画を通じ、権利者の許可なく生成されるAI音声や映像に対して、山寺宏一さん、梶裕貴さんら声優25名とともに「NOMORE無断生成AI」と、警鐘を鳴らしました。

 10月15日に公開された21秒の動画は「【第0弾】」と称されており、冒頭より中尾さんが出演。「私たちの声は商売道具で、人生そのものです。無断で生成AIに使われている私たち声優の声を聞いて下さい」と語るにとどまり、本編は近日公開であるようです。

 公開されたYouTube動画の概要欄には、「新しい技術は、これから私たち人間に大きな恩恵を与えてくれるでしょう。でも同時に、お互いの気持ちや、未来の文化のあり方まで視野を広げて、議論を重ね、みんなで技術の使い方を考えていきたい。そのきっかけとなるように、この動画を作りました」と活動の説明が。

 生成AIが活用されることで、様々な分野で新たな可能性が拓かれていくことに理解を示しつつも、やはりそこに必要なのは法律やルールの制定。「傷つけ合う言動の応酬ではなく、平和的な認識のすり合わせのための議論を有識者も交えて行い、文化的なルール作りをしていきましょう」と、態度を明らかにしています。

声優有志が「NOMORE無断生成AI」訴え 声の許諾なき使用・販売に警鐘
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

 声優の声を用いた生成AIに関する取り組みと言えば、先日は大手声優事務所の「株式会社青二プロダクション」が、演者の権利を適切に守りながら、声の可能性を高めることを目的に、AI音声プラットフォームサービスを提供する「株式会社CoeFont」と協業することが発表されたばかり。

声優有志が「NOMORE無断生成AI」訴え 声の許諾なき使用・販売に警鐘
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

 「ドラゴンボール」孫悟空役の野沢雅子さんや、「機動戦士ガンダム」ギレン・ザビ役の銀河万丈さんら所属声優たちの音声データを、CoeFontのAI音声技術で、英語や中国語をはじめとした多言語化し、音声アシスタントやロボット・音声ナビゲーション搭載製品などへ提供していく、という内容です。

 ただし、アニメーションや外国語映画の吹き替えなど「演技」の領域に関わるものにはサービスを提供せず、あくまで「演技」領域を除いた多言語化したAI音声を作成し、AI音声技術と声優の活動領域の棲み分けを適切に行います、との説明が行われていました。

 こうした各所の取り組みからも、生成AIに関するルールメイキングの必要性が迫られていることは明らか。声優業にかかわらず、生成AIの使用に関しては、有権利者が当然のように守られつつ、多くの方のために有効活用される、といった正しい方向へ進むことが期待されます。

※掲載画像はYouTube「NOMORE無断生成AI」動画のスクリーンショットです。

(山口弘剛)

提供元・おたくま経済新聞

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