内省的・論理的思考には、行動する前に考えること、論理的かつ多面的に考えること、冷静に変化を認識すること、感情をコントロールすること、知識や過去の経験を活用することといった特徴が含まれます。
社会的・感情的認識には、他者の感情を思いやり気遣うこと、自分を客観的に認識し謙虚さを持つことなどが含まれています。
研究主任のマクシム・ルドネフ(Maksim Rudnev)氏は「驚いたことに、この2つの領域は私たちが調査したすべての文化圏で出現し、どちらも賢さの明確な特徴として認識されていました」と話します。
ただしここで一つ、重要な傾向も見出されました。
それは人々が「社会的・感情的認識」よりも「内省的・論理的思考」の方を賢さの第一条件として重きを置いていたことです。
「社会的・感情的認識」は「内省的・論理的思考」が満たされて初めて、賢さの特徴として貢献していたのです。
例えば、具体的な例として、他者を思いやる能力が高くても、論理的な思考力が低い人の場合、自分の経済力や後先のことを考えずに、無差別に寄付をしたり、人助けに邁進する可能性があります。
当然こうした人は善良ではあっても、「思慮が浅く、お人好しなだけ」と思われ、賢いとは認識されません。
そのため、ここでいう人の感情を思いやることができる賢い人というのは、自分と異なる考え方の人に対しても理解することに努め、冷静に対応できる人を指しているのでしょう。
討論番組など見ていても、自分と異なる意見にすぐムキになる人はあまり賢そうに見えませんが、自分と異なる考えの相手でも冷静に意見を聞いてなんとか相手の理解に努めようとしている人は賢そうに見えるでしょう。
つまり、冷静に内省して思考できる能力が土台にあってこそ、他者を思いやる能力が「賢さ」に結びつくと考えられるのです。