では後者の要領よく人を使い、次々と事業を立ち上げる方が優秀なのでしょうか?私はその手の方々とも時折お会いしていますが、今一つ話しが盛り上がらないのは彼らに事業愛がほとんどなく、話の主体が「なんぼ儲かったか?」であり「どうやって節税し」「自分がどれだけ面白いことをして」「飛行機やホテルのポイントを使ってアップグレードすることをひそかに自慢し」「自分の子供がどんな教育を受けているか」といった事業から生み出されたマネーの成果といかに自分が面白いライフをしているかという御披露話が多かったりします。

そういう方との会話で必ず出てくるのが「えぇ、ひろさん、ご存じないのですかぁ?」的な会話です。それは一種の会話のテクニックで知らないことに対して一旦、辱めておき、さもありなんという話を聞かせるのです。聞く方は「へぇー」ですよね。まぁだいたいこの手のトークは話半分で聞いておけばよろしいと思います。

私の想像ですが、後者の積極投資型の社長スタイルがポピュラーになったのは2000年代初頭にあったMBAブームが一つの背景ではないかと思います。当時20代後半、つまり今なら50代前半ぐらいの方です。MBAを一概に括るつもりはないのですが、MBAでは経営学的に突き詰めればどんな業種でも経営できるという学問的発想があり、MBAを取得したような方は万能型になりやすいと感じています。また事業を数字で判断する教育を受けているので数字が主体であり、それを読み込み、割り切ります。その結果、継続できるもの、できないものを仕分けし、ドライな経営が主体になるようです。

では2つのタイプの社長さんのどちらが良いか、と聞かれれば私はどちらも一長一短で足して2で割るぐらいのバランス感覚が必要ではないかと考えます。社長が専門極み型になると時として従業員がついていけない問題が生じます。社長はその分野に自信があるので下からの意見を聞かなくなるのです。するとワンマン型になりやすくなり、社長が全て判断することになります。これが深化すると社長は営業、技術改革、人事、財務、経理…といった必ずついて回る業務に時間配分で苦戦します。「アッと思ったら口座にお金がなかった」ということも起きるわけです。急いで銀行に駆け込んだ、というドラマのような話も事実ありました。また、組織が育ちにくく、経営環境の変化対応も鈍いものになります。