石破氏は地方に暮らす自民党支持の高齢者に人気があり、高齢者は固定電話にかかってくる世論調査に忌避感が少ないため、石破氏支持の割合が高まったとする説がある。だが、これでは発足と同時に内閣の支持率が低迷した理由を説明できない。

思い出してもらいたいのは、どのような人々が世論調査に回答しているかだ。石破氏が首相にふさわしい人物とされたことと、内閣への支持率が28.0%と目も当てられないものになった答えは、回答者の実像にある。

石破内閣の支持率が低迷した理由は、石破首相と内閣に期待できるものがなかったからだ。これ以外に理由はない。「石破内閣を支持しますか」と問われて、過去の内閣や理想とする内閣像と比較して期待できないと回答したのは、政治不信の人を75%程度も含む集団で、彼らにとって失望の程度が大きかったというだけだ。

ではなぜ、政治不信層から石破首相誕生が待望されていたのか。

これもまた、あまりにも単純な原因から生じたものだった。

大多数の国民にとって政治家への認識は、報道が伝える情報によって形作られる。記者の信念が記事の書きぶりに影響を与え、マスコミは特定の政党や政治家を常に批判する。首相は批判されっぱなしで、保守的傾向が強いと目される政治家も醜悪な人物として伝えられがちだ。

逆に自民党の非主流派は報道される機会が少ないので粗が目立たないだけでなく、主流派に批判的であればあるほど好意的な報道が増える。石破氏は大臣経験者であるため人々に存在が知られているうえ、長期政権となった安倍政権への批判を繰り返し、これをマスコミが好意的に報道した。

マスコミが石破氏に政治家としての正当性を授けたのだ。

世論調査に答えるのは、報道機関への不信感がない人々が多かった。報道の通りに、石破氏を清廉潔白かつ論理的に権力者を批判できる人と理解している層だ。さらに政治に不満があり、政党や政治家が信頼できない人たちである。