では、なぜこうした差が生まれるのでしょうか?

以下で、その要因として考えられる2つの社会的な事象を検討します。

医療のビジネス化

先ほど、「日本人の外来受診数は世界一」と書きましたが、実はこれ厳密に言うと間違いです。近年、韓国に抜かれ日本は2位になりました。

まぁ、日・韓の2国で世界トップを独占しているということです。これは「人口当たりの病床数」でも同じく世界一。日韓は英米の5倍の人口当たり病床数を持っています。

医療は大きく分けると「外来医療」と「入院医療」に大別されるのですが、「外来受診数」も「病床数」も世界トップということになります。日・韓は「外来医療」でも「入院医療」でもその提供量・需要量で世界トップを走っているということです。

ではなぜ、日・韓ではこれだけ多くの医療が提供され、需要されているのでしょう?

実は、日・韓は「医療をビジネスに開放」している数少ない国なのです(米国もそうですが米国は医療費が異常に高くその闇は非常に深いので今回は割愛します)。

先ほど、先進国の多くの国では「国民から集めた税金で医療が運営されている」と書きました。これらの国における医療は、日本における警察・消防・公立学校とおなじく「国が管理運営する公的事業」なのです。なので、医療の市場を拡大するという考えはありません。日本でも警察・消防を産業化・ビジネス化して市場を拡大しよう!とは誰も考えないですよね。それと同じです。

一方、日本・韓国では多くの医療は民間のビジネスによって経営されています。ですので、どうしても自院へ患者を集め、収益を増やし、経営を安定させたい、という欲求が働きます。すべての病院が患者を増やしたい、と思っているので、その帰結として(見つけようと思えば病気が見つかる高齢者を中心として)患者が増えてゆく、ということになります。

これは決して褒められたことではありません。

もちろん、医療を受ければ受けるだけ健康になったり、寿命が伸びたりするのであれば、それはいいことでしょう。では、諸外国の2倍も3倍も入院ベッドを持っていて、外来受診も世界で2番目に多い日本人は、外国人の2倍も3倍も長生きなのでしょうか?